前夜祭イベントで将来技術を見せた一方で、ショー会場のハノーバー・フェアでは現段階で実用化されている製品に特化した展示をしていた。北米市場向けには、顧客の望みに応じてカスタマイズの幅を広げられる「トラック・テーラーメイド」を発表。同市場で人気のハリウッド映画「トランスフォーマー」とのコラボレーションを企画するなど、市場に特化した戦略をとる。加えて、直前にインドネシアで開催された「ジャカルタモーターショー2014」でデビューしたトラック「3143」も主役級の扱いだった。インドで生産してASEANに輸出する、アジア戦略の中核を担うモデルだ。メルセデス・ベンツから供給されるマニュアル変速機(MT)やエンジンなどにより、信頼性の高さも強調していた。
ハノーバー・フェアからほど近い場所にあるテストコースでは、実車による試乗会も開催されていた。第3世代の自動ブレーキ「アクティブ・ブレーキ・アシスト3」を搭載したトラックのデモ走行は、ダイナミックという表現がふさわしいものだった。先導する「Cクラス」が停止しているのを検知すると、まずは音と光でドライバーに警告し、さらに回避行動を取られないと判断すると、自動で完全停止までブレーキを掛ける。乗用車では普及しつつあるが、重量のある商用車への応用が進むと、さらなる事故低減につながりそうだ。市販予定は2015年となっている。
同乗走行がかなったのは、2013年にミュンヘンで開催された建設機械の展示会「BAUMA」で発表された「Arocs(アロクス)」だ。「Actros(アクトロス)」、「Antos(アントス)」に続く、ダイムラーとしては第3の大型トラックであり、ダンプカーやミキサーといった建機関連の架装を想定した悪路走破性が売りだ。試乗車の駆動系式は、8輪の車輪うち4輪で駆動する8×4。ちなみに、アロクスでは4×2、8×4、8×8/4の3種のバリエーションがそろう。エンジンは全て欧州の排気ガス規制Euro6対応の直列6気筒で、排気量は7.7l(リットル)、10.7l、12.8lの3種。リターダ(補助ブレーキ)を備えるロボタイズドMTの「パワーシフト3」と組み合わされる。
「道なき道」とはまさにこのことで、セカンドギアで発進したのち、約38度の傾斜などはこともなげにこなしていく。最大50度の傾斜の坂道を下るときでも、リターダを使って減速しつつ、ブレーキを制御しながら安定した姿勢で下っていく。傾斜路でバックしようとして前輪の駆動が抜けてしまい、立ち往生したこともあったが、それもボタン1つで後輪を再度駆動させれば、何なく抜け出せた。
今回が初めてのIAA国際商用車ショーというダイムラー商用車部門CEOのベルンハルト氏に話を聞いた。
「商用車販売の絶対数は、地域の経済状況に左右されがちです。北米自由貿易協定(NAFTA)や西欧の市場が拡大した反面、ブラジルやインド、インドネシアの市場が低下しつつあります。日本も税制の変化で瞬間的に伸びるといった状況が起こりました。そうした変化の中で、ダイムラーとしては各地域でシェアを伸ばすことに重きを置いています。ドイツ本国や西欧ではもちろんトップシェア、NAFTAではシェアを減らしても相変わらずトップです。インドネシアは、三菱ふそうトラック・バスが現地の販売網とよい関係を保っていることもあって長年トップシェアを誇っています。ブラジルは市場全体が低迷する中、シェアを伸ばして2位に食い込んでいます。インドは4位に甘んじていますが、ショー会場でご覧になっていただいたブハラ・ベンツで生産してASEAN各地に輸出しているトラックを投入する計画で、3位に食い込むことを狙っています」(ベルンハルト氏)。
ダイムラーの展示で気になったのは環境技術の少なさだ。Euro6への対応や維持費を下げる低燃費化といったものが中心で、目新しさに欠けた。ベルンハルト氏によれば、燃料電池バスやハイブリッドバスに関して語るには時期尚早だが、従来通り技術開発は続けているとのことだった。また、2007年にグローバル・ハイブリッドセンターを三菱ふそうトラック・バスの川崎工場に設置したことで、ダイムラーグループのハイブリッド商用車開発において、三菱ふそうが重要な役割を担っていることも示唆した。
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