ダイムラーと並んでドイツの老舗商用車メーカーとして名をはせるMAN(マン)は、現在Volkswagen(フォルクスワーゲン)グループの傘下にある。将来技術を見せるコンセプトカーのうち、1台はADASを、もう1台はハイブリッドシステムを搭載していた。
ADASについては、緊急ブレーキ、右折時(日本では左折)の死角を警告するアシスタント、車線変更時の死角警告、車載カメラで撮影した画像でミラーを代替するシステム、4種の技術が搭載されていた。会場では、車線変更時の死角警告のシミュレーションを体験した。車線変更時に、前後左右にいる他車両を検知しつつ、進路にそれらの車両が入ってきそうであれば、ドライバーに音と光で警告して車線変更を抑止する。
もう1つ体験したのが、車載カメラで撮影した画像でミラーを代替するシステムだ。ミラーを使用すると、右折時に自転車のようなある程度高速の移動体が歩道から近づいて来ると、大型トラックの運転席から全く見えないことがある。また、ミラーそのものが右前の視野をふさぐこともある。そこで、ミラーの替わりに車載カメラを使って、側方、後方、側方下方の映像を合成した画像を表示する。これまで死角だった部分を、ドライバーはまるで後ろを向いて見るかのように確認することができるわけだ。
興味深かったのが、ハイブリッドシステム搭載車である長距離トラック「MAN TGX 18.440 4×2 BLS Hybrid」のコンセプトカーだ。市街地を走るバスなどと比べると、スタート/ストップが少ないので、ハイブリッド化しても燃費向上効果は8%程度にとどまる。それではハイブリッドシステムでコスト増になった分を、燃費向上による燃料費削減で埋め合わせるのにかなりの時間を要してしまう。商用車の世界では、オーナーシップコストが高いのは致命的だ。マンの代替パワートレイン開発部門に所属するGotz von Esebeck氏に話を訊いた。
「ハイブリッド化による燃費向上効果は、パラレル式を採用しても8%に過ぎません。しかし、1回の給油で長距離を走れることによって、オペレーションコストを大幅に削減できるので、2〜3年で車両価格が増したぶんのコストを吸収できると考えています。長距離トラック用ハイブリッドシステムは、下り坂やブレーキ時のエネルギー回生を重視した設計になっており、1度に大量の回生エネルギーを受け入れられる電池を採用しています」(Esebeck氏)。
マンの「Lion City Bus(ライオン・シティバス)」は、2014年の「バス・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。受賞理由の1つに、ハイブリッドシステムを搭載したモデルの追加があった。シリーズ式で、回生で得たエネルギーはルーフ上のスーパーキャパシタに蓄積する。地元のウォルフスブルクに加えて、環境意識の高い地域で採用が始まっており、燃料費やオペレーションコストの低減によるトータルコストの削減効果を訴求していく方針だ。
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