第14回大会は、8月9、10日の2日間で開催を予定していたが、ファイナルミッションが行われる10日は台風11号の影響で競技が中止となってしまった。今大会は、9日に行われたファーストミッションの結果をもとに基に各賞が選考された。
優しくスピーディーなレスキュー活動で3体のダミヤンを救出・搬送し、最高ポイントを獲得したのは岡山県立大学 ロボット研究サークルの「メヒャ!」だった。同チームは、ベストテレオペレーション賞(レスキューロボットコンテストサンリツオートメイション賞)、ベストパフォーマンス賞、レスキューロボットコンテスト日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門一般表彰を受賞した。
救助活動を行う際、災害現場でいかに情報を収集するかは重要だ。情報が多ければ、救助活動を効率よく確実に実施できるからだ。メヒャ!は「情報を制する!」をテーマに、オペレーションルームとロボット、ロボット同士が情報を共有し、スムーズな連携で救助活動を行うことを目指した。
前述したようにレスコンでは、ロボットが災害現場に向かう前に、ヘリカメラから送られてくる災害現場の映像を基にチームで2分間の作戦会議を開き、救助作戦を立てる。前回まではヘリの操縦を各チームが行ったので、自分たちの必要とする情報を集めることができた。今大会より、ヘリはフィールド中央天井付近からスタッフが操縦して映像をオペレーションルームに送るようになった。
つまり、今まではレスキュー隊がヘリを飛ばして被災地の情報を収集していたが、今大会からは外部の組織が被災地の状況を知らせてくれるというシチュエーションに変化したのだ。これにより、上空から得られる被災地の情報はかなり制限されたものとなる。ロボットに搭載されたカメラによる、現場での情報収集がこれまで以上に重要となるわけだ。
メヒャ!は、チーム全体をまとめる方法として「C4I(Command:指揮、Control:統制 、Communication:通信、 Computers:コンピュータ、 Intelligence:情報)」の考え方を導入、これによりキャプテンの意思決定を支援し、チーム全体に伝達したという。
またカメラ画像共有システムで、各ロボットに搭載されたカメラ画像をチーム全体で共有。広範囲の災害現場の情報を把握し、ダミヤン救助時には他のロボットからの視点映像も参照しながらスムーズな救助を行った。
オペレーションルームでは、オペレーター同士がロボットの状態やフィールド上の情報を、インカムを用いて音声でも共有し、ロボット間の連携を容易にしたという。映像だけではなく、音声も併用することで情報伝達の誤りを防いだそうだ。
メヒャ!の1号機は指揮官の目に相当する。ボディ上部には、ズームやオートフォーカス機能を備えたカメラが搭載されている。レスキュー活動を開始すると、まずこの1号機が出動し、フィールド内を走り回ってヘリだけでは把握できない被災地の状態やダミヤンの位置情報を集め、オペレーションルームに送る。その情報に基づいて救出作戦を再確認し、チームキャプテンが全オペレーターに作戦内容を伝達する。
1号機カメラから得られた各ロボットの位置情報はフィールドマップに表示され、オペレーターが相互の位置関係を把握し救助活動の連携をとりやすくしている。3号機は、ガレキ内に残されたダミヤンを救助するときに活躍する。倒壊した家の周囲には、ガレキが散乱しておりロボットが近づくのは難しい。家屋の柱が崩れているために、ダミヤンが倒れている床は斜めに傾いている。この“傾いた床"は前回から加わった新たな技術課題だ。
2階建て家屋のガレキからダミヤンを救助するため、3号機に搭載された救助ベッドは、パラレルリンク機構になっている。4本のアームでベッドの高さと角度を調整し床にぴったりと位置を合わせることができる。ロボット上部のアームでダミヤンの向きをベッドと並行になるようにしたうえで、引き込み用アームをダミヤンの脇に差し込んでベッドへと救出する。
救助用ベッドが宙吊りタイプのため、周囲にガレキがあっても家屋のそばまで近づけるのがポイントだ。アームでダミヤンの方向を変えることができるため、家屋周囲のガレキが少ないところからアプローチしての救助が可能だ。
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