今回のミーティングは、三立精機の会議室で行うことになった。鈴木さんだけでなく谷田様も来られることに。私はもちろん、山田課長も緊張気味だ。
谷田様、本日は御足労頂きありがとうございます。
こちらこそ御社のモデルベース開発を拝見させて頂けること、感謝します。
大島さんと五十嵐さんは、モデルの構成やシミュレーションの性能に触れながら、現状でできること、改善すべきことを技術者としての所感を交えながら説明した。
恐らくCVTとしてはそれなりの振る舞いをすると思っています。従来通りの開発ならびに仕様であれば、私たちも楽ができそうです。しかし、このように実機に近い再現性があるとなると、性能面の改良や緊急時の対処など、より次元の高いCVTの仕様決めの要求も出てくると考えているのですが。
実はそういったことを考えています。自動車メーカーが最も恐れるのはクレームです。お客さまに不満を感じさせるのは、とても心苦しいことです。従って、単に故障という概念ではなく、お客さまの期待を裏切らない性能が実現できていることの検証が必要だと考えています。そのためには皆さんと協力して、お客さまが求める性能を満足させられるような設計仕様や設計諸元を明らかにしたいのです。そこで、鈴木に仕様を決めるために必要となる技術的詳細を説明させます。
鈴木さんは、車両重量が800kgと軽量で、排気量1l(リットル)のエンジンとCVT+パラレルハイブリッドシステムによって40km/lの燃費達成を目指す「バンビーナ」についての技術的な説明を行った。
これらの他、車両としての要求レベルでのモデルも提示された。
具体的には、各サプライヤが入力に対してあってほしい出力がモデル化されていることや、自動変速制御としては要求トルクが与えられるためこれに追随する最適な変速制御を実現することが重要、といったものであった。
なるほど。とすると、エコモード走行時はその図1の最適燃費運転条件に合致するようなCVTの変速を算出するのですね。やはり、エンジンのトルクが必須ですね。
大島さんの問いかけに、鈴木さんは即座に回答した。
今回の開発では、各サプライヤにトルクをコアパラメータとして開発していただきます。例えば、エンジンが100のトルクを出すとき、エアコンには10のトルク、発電機には15のトルク、残りがCVTに供給されるといった具合です。その時、エコ走行を実現するCVT変速比に制御するよう仕様を決めていけばよいわけです。
ではCVTの動作に関する仕様はこちらで決めて、動く仕様書を添えて御社に納品する、ということでOKですね。
はい。それが自動車の品質を改善するすべのはずです。なお、こちらがモード燃費での走行に必要となるバンビーナのトルク出力モデルになります。車両の慣性や、ドライバーの操作もモデル化してあります。CVTの制御システムを開発する上で、十分ご期待に応えられると思いますよ。また、こちらはわれわれが実践しているV字プロセスという開発の流れを説明した資料になります。ご参考にどうぞ。
全員が、これまで以上の連帯感を実感した一瞬だった。
よ〜し。私、前のめります!
これまでの緊張をときほぐすように、全員の笑い声がこだました。
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