基調講演の終了後には、報道陣に対して質疑応答の機会が設けられた。主な一問一答の内容は以下の通り。
―― 製造業における課題をどのように見ているか。
ワイラー氏 常に成長する市場や産業を見つけ、作るモノを変えていくということが重要だ。それを見つけられるか、そうでないかということがそれぞれの製造業における課題といえるだろう。
例えば発電所や重工業などを考えた場合、グローバルで新たな都市などが作られる動きが活発な時はその市場に入れれば成長することができる。しかし再生可能エネルギーを活用することが中心になってきたら、従来のビジネスモデルを変革して、これらを提供できるように自らを変革しないといけない。
例えば、先進国や中国などを見ると高齢化が進んでおり、社会保険などの問題を各国が抱えている。これらを効率的に解決するための技術として、ICTを活用した医療機器やヘルスケア製品に注目が集まっている。そこでシーメンスやGEなどと同様に、大手電機メーカーも医療機器に目を向けるようになった。
このようにさまざまな市場を見ながら作るモノを変えるということが重要だ。
―― 日本のヘルスケア業界をどう見るか。
ワイラー氏 日本のヘルスケア産業はほぼ世界と同じ変化を示している。ただ、日本は世界よりも高齢化が進んでいるのでより影響度は高い。
日本は現在は病院中心型のヘルスケア産業となっている。ただ、それでは高齢化が進む中で効率が非常に悪い。日本の平均入院日数は17日だが、米国は3.9日。コストの観点からすると、医師が重病の人に集中できない。これを行うにはモデルを変えないといけない。
そういう意味では、もっと製造業は医療機器に取り組むべきだ。全世界でベビーブーマー(団塊の世代)の高齢化が進む。そうすると、医療が必要な人口はさらに増加する。大手家電メーカーが医療機器の製造に移行しているが、もっと取り組んでよいと考えている。
医療やヘルスケア分野において、日本は臨床試験とか医薬品の安全性などについては常に世界をリードしてきた。今後分子レベルの薬品開発などが加速する中、テクノロジーによる薬効の向上が進む。データ分析による効果的な薬品開発なども同様だ。例えば、米国ファイザーがデータ分析により、ある病気の5%が遺伝子の突然変異により発症していたことが分かった。それをターゲットにした医薬品開発できたという例がある。テクノロジーにより解決できる領域はかなり広いだろう。
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