富士通研究所は新たな研究開発戦略を発表。「Fujitsu Technology and Service Vision 2014」に基づき、研究開発の方向性を再編するとともに、従来以上にビジネスモデルへの貢献を強めていく方針を示した。
富士通研究所は2014年4月15日、研究開発戦略を発表し、技術開発とともに新たなビジネスモデル提案を行うことで、ビジネス面での貢献を強めていく方針を示した。
富士通研究所は富士通グループの研究開発子会社。富士通グループからの開発投資を受け、研究成果をフィードバックしている。企業の研究所というと、以前は依頼を受けた研究課題をコツコツと研究するイメージだったが、最近ではよりビジネスに貢献することが求められている。同研究所も例外ではなく、より高いビジネス貢献を目指す。
特に力を入れているのがイノベーションにつながる先行研究分野だ。同社では、研究開発における資源配分の明確化を進めている。その中で全リソースの約半分を割り当てているのがこの先行研究分野ということになる。具体的には新事業創出や事業拡大、競争力強化に向けた研究を行う。具体的な事案を富士通グループの事業部から受けるわけではなく、将来の社会の姿から逆算し、富士通 代表取締役の山本正已氏が委員長を務める同研究所内の「技術戦略委員会」と、実現性を探る「技術戦略タスクフォース」とで、研究内容を決めている。
富士通研究所 代表取締役 佐相秀幸氏は「事業部からもたらされた研究案件だけでなく、研究所自らが事業部に提案していくような姿勢が必要だ。技術にとどまらず新たなビジネスモデルでイノベーションを生み出したい」と話す。
富士通では2014年4月に、技術ビジョン「Fujitsu Technology and Service Vision 2014」を発表し、「人・情報・インフラ」の3つの経営資源を融合で新たな価値を創出する「ヒューマンセントリック・イノベーション」を提案。これを実現するために「ヒューマン・エンパワーメント」(ICTの力をテコに、どのように人をつないで力づけるのか)、「クリエイティブ・インテリジェンス」(どのように情報から知を創造するのか)、「コネクテッド・インフラストラクチャ」、(どのようにICTと多様なモノをつなげて価値を創造するビジネス・社会の基盤を整備するのか)という3つの軸での製品やサービスを体系付けた。
同研究所でもこれらの製品・サービス体系の再編に合わせて、これらに対応する4つのイノベーション領域を新たに定めたという。
「ユビキタスイノベーション」は、ICTの力で人と環境を円滑につなぎ、人々の活動を支援することを目指す。ヒューマンインタフェースや、モバイルサービス技術、センシング技術など、ICTをより簡単で円滑に現実環境に適応させる技術が対象となる。
「ソーシャルイノベーション」は、従来ICTを活用していなかった分野でICTを導入することで得られる価値を提供する。こちらは、2013年12月に従来分かれていた研究所を合わせて「ソーシャルイノベーション研究所」を作り、新たな価値提案を進めているという。
「ICTイノベーション」はICT技術の発展を目指すものだ。「超スケール」「プロアクティブ」「ソフトウェア制御化」について研究開発を進めていく。
「ものづくりイノベーション」は、ハードやソフトなどの他、これらを作るツールなどの研究開発だ。実際の製品に関連する技術そのものと、それらを作る基盤や効率化する技術など“広義のモノづくり”全てを対象に研究を進める。例えば、ソフトウェア地図やロボット仮想教示技術、量子ドットレーザーなどが当てはまるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.