意外に思うかもしれないが、フォルクスワーゲングループ傘下の12ブランドのうち、3ブランドがスーパースポーツカーメーカーである。冒頭に紹介したランボルギーニに加えて、Bentley(ベントレー)とBugatti(ブガッティ)の発表もイベントに華を添えている。ベントレー史上最速をうたう「コンチネンタルGTスピード」の最高速度は時速331km。排気系の最適化によって、最高出力が10ps(7.5kW)、最大トルクが19.6Nmスープアップされた結果、最高出力635ps(467kW)/最大トルク820Nmを発生する。
1998年に傘下に入ったブガッティは、20世紀初頭に輝かしい戦績を上げた伝説のスポーツカーブランドだ。ジュネーブモーターショー2014では、世界最速の「ヴェイロン16.4グランスポーツ ヴィテセ」に、ブガッティの創業者であるエットーレ・ブガッティ氏の弟の名を関した「レンブラントエディション」を発表した。明るい茶系のツートーンボティに、内装も明るいブラウンでコーディネイトする。4基のターボで過給して、最古出力1200ps(883kW)を発揮する排気量8.0lW型16気筒エンジンが車両中央に縦置きされるパワートレインに変更はないが、最高速度は時速404.84km、時速0〜100kmの加速時間を2.6秒でこなす俊足ぶりは相変わらずだ。世界限定3台、価格は3億円超と、何もかもが“超弩級”だ。
しんがりを務めるのは、フォルクスワーゲングループの技術担当トップ、ハインツ・ヤコブ・ノイサー氏である。「ゴルフ」ベースのコンセプトカー「T-ROC」と、同じくゴルフをベースとした高性能プラグインハイブリッド車「GTE」だ。
T-ROCは世界的に流行している小型SUVの提案である。庶民の実感として欧州の経済がそれほど好調とはいえず、そのため小型車へのダウンサイザーが増えている。しかし、いきなり小さなクルマにするのは抵抗があるようで、実際、Renault(ルノー)の「キャプチャー」やPeugeot(プジョー)の「2008」、Ford Motor(フォード)の「エコスポーツ」、ホンダの「ヴェゼル」といったBセグメントのSUVが続々と世に送り出されている。
フォルクスワーゲンも、「ポロ」をベースにした「タイグン」を南米向けに開発している。T-ROCは、ポロよりも車格が1つ上のゴルフをベースにしたSUVの提案になる。同じくゴルフをベースにした「ティグアン」より小型の全長4.2mに四輪駆動機構を組み合わせた。2ドアかつ、2分割して取り外せるルーフを備えることにより、既視感のないデザインを生み出している。今後、競争が増すであろう小型SUVの世界に個性派を打ち出す姿勢だ。
フォルクスワーゲンらしい襟の正しさを表現したのはGTEだ。排気量1.4lのターボエンジンに出力80kWのモーターを組み合わせたパワートレインは、先述したアウディのA3スポーツバックe-tronと同じだ。
フォルクスワーゲングループ傘下にある12ブランドのトップが一堂に会し、モーターショーの主役を前夜にプレビューするグループナイトでは、最後にグループ会長のマーティン・ヴィンターコーン氏が登壇してラップアップするのが常だ。
ヴィンターコーン氏は、「2013年は環境技術をはじめ研究開発に102億ユーロ以上の投資を行い、自動車1台ごとの平均CO2排出量を約128g/kmまで引き下げた。グループ内の54車種のCO2排出量は100g/km以下であり、2018年までには、水やエネルギーの消費量とCO2排出量をさらに25%削減する」と述べ、環境問題への取り組みに注力し続ける方針を示した。
2018年までに世界一の自動車メーカーになるという宣言「マッハ18」の実現に向けて、「発言だけではなく、実行に移してきた」というヴィンターコーン氏の言葉に偽りはないことを見せつけたグループナイトだった。
川端由美(かわばた ゆみ)
自動車ジャーナリスト/環境ジャーナリスト。大学院で工学を修めた後、エンジニアとして就職。その後、自動車雑誌の編集部員を経て、現在はフリーランスの自動車ジャーナリストに。自動車の環境問題と新技術を中心に、技術者、女性、ジャーナリストとしてハイブリッドな目線を生かしたリポートを展開。カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の他、国土交通省の独立行政法人評価委員会委員や環境省の有識者委員も務める。
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