DBWシステムの導入により、さまざまなメリットが生まれました。
代表的なメリットの1つがアイドリングコントロールシステムの簡素化です。
DBWシステムが導入される前のスロットルボディには、水温の変化や吸気温度の変化、エンジン負荷の変化が生じても一定のアイドリング回転を保持するために、さまざまなアクチュエーターが組み込まれていました。
その理由は、アイドリングに求められる吸入空気量とは関係なく、スロットルバルブはリターンスプリングによって機械的(アイドルアジャストスクリューの突き出し量)に定められたデフォルト開度まで確実に戻ってしまうからです。
仮にデフォルト開度における吸入空気量が12l(リットル)だと仮定すると、本当は吸入空気が15l欲しいエンジンの状態であっても、物理的に12lしか吸気できません。
こうなると、吸入空気量が不足してエンジン回転が落ち込むのはもちろん、最悪の場合はエンジンが停止してしまいます。
エンジン回転数を電子制御で監視しているのであれば、エンジン回転数が一定値以下に落ち込んだ時点で、点火時期の進角や燃料噴射量の増加などを瞬時に行ってエンジン停止を防げます。しかし、その瞬時の回避策では、本来のアイドリング回転数にピッタリ合致させるほどの細やかな制御を行う余裕はありません。
まるでアクセルを瞬間的に踏み込んだようにエンジン回転が少し吹け上がりますが、相変わらず12lしか吸気できない状態から変化はありませんので、再びエンジン回転が落ち込んでエンジン回転が吹け上がって……という繰り返しを行うようになります(エンジンハンチング)。
このように、機械的に駆動されるスロットルバルブを搭載している車両のアイドリングは、デフォルト開度を基準とした吸入空気の補正を行う必要があります。
そもそもアイドリングとは、刻々と変化するエンジン負荷と燃焼によって生み出される回転力とのバランスで成り立っています。少しでもそのバランスが崩れると不安定なアイドリングになります。
つまりアイドリング回転を一定に保持するためには、刻々と変化するエンジン負荷に追従した細やかな吸入空気量調整が必要であり、それらを一手に引き受けているアイドルコントロールバルブ*2)が経年劣化などで作動不良を起こすと、アイドリング不調に直結する問題があります。
*2)大変多くの種類が存在していますので、“アイドルコントロールバルブ”は総称として捉えてください。作動不良を防止するためには、定期的な点検整備はもちろん、経年劣化に伴う部品交換が必要です。
このようにアイドリング調整のためにさまざまな機構が存在していたわけですが、それだけ大掛かりな構造が必要になる根本的な原因は、スロットルバルブがリターンスプリングによってデフォルト開度に固定されてしまうからです。
しかしDBWシステムを搭載する場合はどうでしょうか?
アクセルペダルを踏まなくても、CPUからの指令によって自由自在にスロットルバルブを駆動できますので、目標のアイドリング回転数になるように直接スロットルバルブの開度を変化させることで、アイドリング回転を一定に保つてます。
つまり、アイドリング調整機構を全て排除しても、何の問題もないということですね。これはすなわち、部品点数を圧倒的に減らせるとともに、故障の可能性や定期的な部品交換に伴う維持費も格段に減ることになります。
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