MONOist 新しいものや外部の血を組織的に取り入れることに積極的であるように感じますが、それについてはいかがですか。
浅倉氏 GEでは現在グローバルに約30万人の社員がいるが、そういう巨大な組織がスタートアップのベンチャー企業のように敏感にマーケットに対応し、俊敏な企業になるように求められている。変わることを恐れないのが重要だ。GEでは、リーダー研修に行くと「チェンジエージェント」になることを求められる。今までのやり方にこだわらず合理的に新しいことにチャレンジすることを、要求されているということだ。
例えば、外部の力を有効に活用するという点で象徴的な取り組みの1つが米国のベンチャー企業Quirkyとの提携だ。Quirkyはユーザーが投稿したアイデアを製品化し、自社ブランド製品として展開するサービスを展開している。そのQuirkyにGEは数千という家電関連の特許を開放し、「Wink」というコラボレーションブランドでの製品展開を始めた。
エジソンの白熱電球が示すようにGEはもともと家電をルーツとした企業だ。しかし現在、家電事業は中核事業ではない。中核でないのであれば、“宝の持ち腐れ”にならないように生かせるところに生かしてもらい、新しいビジネス創出に貢献した方がいいという考え方だ。そこでウィン・ウィンの関係を作った方が建設的だ。
これはグローバル企業のあるべき1つの姿だと思っている。同じ性能、同じ材料で、設計だけが異なり、マーケットに出すというのはリソースの無駄使い以外の何物でもない。自社の技術を囲い込むのはビジネスにとっては大きなマイナスだ。本来は手をつないでやればいいはずだ。そういう意味で、Quirkyとの提携は1つの新たな切り口となるかもしれないと考えている。
MONOist 日本でも広く技術提携を探る取り組みを進めていますね。
浅倉氏 GEでは世界各地で技術連携の動きを進めているが、私は日本における「グローバルテクノロジースカウト」という役割を担っている。スポーツのスカウトと同じことを、日本の技術および技術力を持つ企業に対して行っている。具体的には、「共同開発をする」「ライセンスする(される)」「(GEが)購入する」の3つの取り組みを行っている。これらの枠組みにおいて、日系企業との技術的な協業の機会創出が職務になる。その協業によってグローバルなビジネスに展開することを目指している。
その取り組みの中でオンラインでの技術公募や技術マッチングイベント「GEジャパンテクノロジー・マッチングフェア」開催などの活動を行ってきた。
MONOist 日本の企業の反応はいかがですか。
浅倉氏 まだまだ物足りない反応で、取り組み自体の周知徹底は今後の重要なタスクだ。その中でも中小企業やスタートアップ企業は敏感に反応している。技術そのものはピンからキリまであって、見極めは難しい。「これは面白そうだ」と思っても、先につながらなかった話も数多くある。ただ、現在NDA(秘密保持契約)を結んで継続協議している案件もある。継続協議している企業は、大企業からスタートアップまで幅広い。
技術連携を図るのに奇策はあまりなく、スタート地点は「これ、面白いな」からになる。「GEのニーズに合致するか」はその後の話で、それをすり合わせるのに時間がかかる。そういう意味ではスタートはイマジネーションということになるかもしれない。イマジネーションでGEの事業とリンクさせて「この技術とこのビジネスを結び付けたら」と思う。その提案をビジネスに形作っていくいうわけだ。
この成功数を増やしていくには、結局は接触する企業数を増やしていくしかない。打席に立つ回数を増やしてヒット数を上げることが大事だと痛感している。2014年はオンラインでの技術公募を再び開催する計画だ。2012年に開催した際は125社の応募だったが、さらに多くの企業からの参加を呼び込み、協業の機会を増やしたい。
MONOist 日系企業に特に期待する技術はありますか
浅倉氏 日系企業の技術力をGEは高く評価していて、提携を図りたい技術領域は数多い。先端材料、先端製造技術、海洋や水に関する技術、農業技術、ミニチュアライゼーション(小さくする技術)、省エネ(エネルギー効率)技術などは非常に興味深い。
特に材料と製造技術については、世界最高クラスの技術力を備えており、提携の可能性を期待している分野だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.