日本法では、特許権は「業」としての輸入でなければ特許権の侵害とはならず(特許法68条)、商標権は個人的使用に効力が及ばないとされます。また、頒布目的以外の著作物の複製物の輸入も著作権の侵害とは見なされません(著作権法113条1項1号)。従って、海外の販売者から通信販売などで直接に消費者が輸入する場合(B2C)は、知的財産権の侵害とはならず、税関における水際措置の対象とはなりません。
日本の関税法は、輸入される製品に特許権が及ぶ場合に輸入禁止の対象となるとしています。生産方法の特許権の侵害によって生産された製品には特許権の効力が及ぶので、輸入禁止の対象になります。また、著作権侵害についても複製物が著作権侵害品に該当する場合には輸入禁止の対象となります。
一方で、海外において日本の特許権の対象となっている製品や特許権の対象となっている方法が使用された場合であっても、輸入される製品に特許権の効力が及ばない場合には、輸入は禁止されません。また、著作権を侵害するソフトウェアが使用されて生産された製品も、その製品そのものに著作権の効力が及ばない場合は、輸入は禁止されません。
知的財産権を侵害して生産された商品などが、貿易の中継地を通じて、輸入されることがあります。この場合、生産国などから中継地への輸入が知的財産権の侵害となる場合(B2B)であっても、中継国から日本の消費者が輸入した場合(B2C)には、知的財産権の侵害とならないので、水際措置の対象とはならなりません。従って、この場合は中継地における知的財産権の保護が重要性を持つことになります。
アメリカ合衆国では、特許権を侵害する製品、著作権を侵害する複製物、商標権を侵害する商品などの輸入を、国際貿易委員会(ITC、International Trade Commission)における手続により、防止する措置が定められています(関税法337条(a)(1)(B)〜(E))。
この他に、不正な競争(misappropriation)となる商品の輸入を防止する措置が定められています(関税法337条(a)(1)(A))。この不正な競争となる商品の輸入に、国外において営業秘密を侵害する行為によって生産された商品の輸入が含まれるものと解釈されています(TianRui Group Co. Ltd. v. ITC, 661 F.3d at 1325)(関連記事:販売差し止めの実力行使も!? ――サプライチェーンを狙い撃つ米国違法IT規制)。
従って、国外における生産過程に営業秘密が使用されている場合(生産過程に営業秘密を含んでいる場合)には関税法337条の手続を取ることができます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.