転職したソフトウェア会社は、事業の規模が小さく、「プロジェクトなら何でも」というスタンスで幅広く受注していました。松本さんは手を抜くことなく、エンジニアとして仕事を続けました。前職での仕事に比べれば、規模は小さいものではありますが、リーダー、マネージャとしてプロジェクトを指揮していきました。
1社目、2社目のような大きな会社では、リーダーとはいっても会社の決定に従って動くというスタンスでした。しかし今回入社した会社は、規模が小さいこともあって、松本さんは経営に近いポジションで仕事ができるようになりました。会社自体に自ら働き掛け、変えていくことに面白さを感じるようになったのです。
やがて、父親の病状はある程度落ち着きを見せ始めます。一段落して自分のキャリアを顧みたとき、「もう少しエンジニアとして活躍したい」という気持ちがわいてきました。請負の会社であったため、プロジェクトに一貫性がなく、仕事の幅に限界を感じていたのです。
東京支社への出張が続き、東京に住む選択肢が見えてきたところで、転職を決意しました。
転職を決意した松本さんのレジュメは、理路整然と分かりやすくまとめられ、熱意のある自己アピールが書かれていました。それを見ただけで、優秀なエンジニアであることが分かりました。実際に会った印象も温厚で頭の回転が速く、熱意のある想像どおりの人物でした。
松本さんのキャリアは、年齢や、直近でマネジメントしたプロジェクトの規模からいうと、一般的に評価の高いものではなかったかもしれません。
しかし、応募した企業のうち、高い技術で定評のある企業から内定をもらうことになりました。
地元の企業に転職したときは200万円程度年収がダウンしたのですが、今回の転職によってメーカー時代に近い年収を得ることができるようになりました。将来的には、年収アップの可能性もあります。
それだけではなく、刺激的な仲間とキャリアアップすることができ、会社と一緒に成長を感じることができる環境であることに、松本さんは喜びを感じています。
今回の転職の成功理由は2つです。1つ目は、自分のこだわりだった「開発」という仕事を、諦めずに続けていたこと。2つ目は、その中で新しい価値観を見いだしながら、さらなる向上を忘れなかったことです。
メーカーは地方に工場や支社を持つことが多いため、製造業エンジニアは、場所にとらわれずにキャリアを継続するチャンスがあります。さまざまな理由によるキャリアの中断や、ペースダウンに負けない可能性を秘めているのが、製造業エンジニアという職種の魅力の1つであるといえるでしょう。
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