車載情報機器向けネットワーク規格MOSTの標準化団体であるMOST Cooperationは、東京都内で会見を開き、MOSTの最新規格となるMOST150を用いた先進運転支援システム(ADAS)ネットワークのデモ展示を披露した。
車載情報機器向けネットワーク規格MOST(Media Oriented Systems Transport)」の標準化団体であるMOST Cooperation(MOSTCO)は2013年11月14日、東京都内で開催した「第14回MOSTインターコネクティビティ・アジア会議」に併せて会見を行い、MOSTの最新規格となるMOST150を用いた先進運転支援システム(ADAS)ネットワークのデモ展示を披露した。今後、自動車向け機能安全規格であるISO 26262への対応などを図っていく計画だ。
MOST150は、MOSTの3世代目となる規格で、帯域幅は150Mビット/秒である。デモ展示を行ったADASネットワークとは、MOST150を用いて車載カメラの映像データを送る伝送ラインを最大8チャネル接続し、ADASのメインボードに送る通信ボードのことである。通信ボードには、MOST150の各チャネルの映像データをルーティング/スイッチングするエンジンが搭載されている。ADASのメインボードとの接続ラインは、MOST150の帯域幅を8チャネル分カバーできるように、最大1.2Gビット/秒となっている。
MOST150とADASネットワークを使うことで、最大8台の車載カメラから1080pのHDビデオ映像をH.264にエンコードして取り込み、サラウンドビューとして合成し表示させることができる。車載カメラとADASネットワークの通信ボードは、同軸ケーブルで接続される。車載カメラで撮像してからADASのメインボードでサラウンドビューなどの映像として出力するまでの遅延時間は10ms以下を保証している。
MOSTCOのエグゼクティブディレクタを務めるHenry Muyshondt氏は、「MOST150は、車載カメラから10ms以下のレイテンシでビデオ映像のストリーミングが行える。車載カメラ側に通信用のマイコンを搭載する必要はない。その上、同軸ケーブルを介してネットワークに接続されたデバイスには同時に電源を供給することもできる」と話す。
Muyshondt氏は、今後のMOSTの取り組みについてもいくつか挙げた。例えば、自動車向け機能安全規格であるISO 26262への対応がある。「バックモニターなどの用途では、システムとして機能安全を考えていく必要がある」と述べた。この他、車車間通信や路車間通信を視野に入れて、他の車載ネットワーク規格との相互接続を可能にするための新しいゲートウェイなども開発目標としていることを明らかにした。
この他、記者会見ではMOSTネットワークを搭載した車両についても紹介した。1998年にMOSTCOが設立され、第1世代のMOST25、第2世代のMOST50、そして第3世代のMOST150が規格化されている。これまで、トヨタやGeneral Motors(GM)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)など、世界の主要な自動車メーカーがMOSTを採用してきた。Muyshondt氏は、「MOST搭載車は2013年には153車種となった。最新のMOST150は、Daimlerの『メルセデスベンツSクラス』や、フォルクスワーゲングループの7代目『ゴルフ』、Audiの『アウディA3』に採用されている。中でも、ゴルフという大衆車に、MOST150が採用されたのは特筆すべきことだ」と述べている。
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