山寺氏は、FUKUSHIMA Wheelを「車輪の再発明」と位置付け、自転車を中心に据えたプラットフォームで、B2G(Business to Government)、B2B、B2Cへのビジネス展開を考えている。
B2Gの展開としては、放射線量や窒素量、一酸化炭素量などの環境データを行政機関向けに販売することを検討しているという。環境データは放射線量に限らず、地域の問題に応じたセンサーを搭載することで柔軟に対応し、さまざまなデータを収集する。例えば、東京やニューヨークの都市部では加速度センサーを搭載して渋滞状況を、騒音問題で悩む地域ならばマイクを搭載して騒音を数値化して提供することも可能だ。
しかし、こうした展開を実現するためには、何よりも“普及”が不可欠だ。そして、より多くの情報を集めるためには、日本全国、いや世界中の人々にFUKUSHIMA Wheelが搭載されている自転車を利用してもらう必要がある。
そこで、B2Bの展開としてFUKUSHIMA Wheelを観光地に配備し、レンタサイクルとして観光客に活用してもらうことを想定。環境データの測定に協力してもらう代わりにレンタル料を0円に設定すれば、観光客が気軽に利用してくれるだろう。そして、観光地向けらしく、ハンドルに搭載したスマートフォンにナビゲーションを表示したり、観光施設や店舗などで利用できるクーポンを発行したりすれば、地域からの協力も得やすい。同時に、利用者の移動情報(どこをどのように回ったかなど)を観光事業者に販売することもビジネス展開として十分に考えられる。
また、レンタル料0円を実現する“肝”となるのが、広告収入だ。スマートフォンのGPS機能で現在走行中の位置情報を取得し、その周辺地域にマッチした広告を後輪のLEDで表示する。広告料金を企業から徴収すれば、レンタサイクルの利用料を運営側で賄うことは十分に可能だ。
さらにその先の展開として、自転車とSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を連動させた利用、つまり、B2Cへの展開も構想している。スマートフォンに身長や体重などを入力して運動量を計測できたり、「チーム・マイナス6%」(地球温暖化の抑制を目的に2005年〜2009年12月まで日本政府が主導したプロジェクト)のように、クルマを使ったときと比較してどれだけ地球環境の保全に貢献できたかを測定できたりする。例えば、ここにゲーミフィケーションの要素を加味すれば、仲間と楽しみながら、自転車に乗る喜びも増幅させることだって可能になるだろう。
また、「Google AdSense」のようなユーザー自身に広告収入が入るシステムを構築。ユーザーにとっては、「自転車に乗って健康促進&エコ活動しながら、ちょっと副収入が手に入る」という“うれしいシステム”である。
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