富士通とデジタルプロセスは、デジタル生産準備ツール「FUJITSU Manufacturing Industry Solution VPS」の最新バージョン「VPS V15L14」を発売する。
富士通とデジタルプロセスは2013年11月11日、製品の組立プロセス検討を3次元モデルで支援するデジタル生産準備ツール「FUJITSU Manufacturing Industry Solution VPS(Virtual Product Simulator、以下VPS)」の最新版「VPS V15L14」を発売した。
富士通では、自社のモノづくりのノウハウと、自社がビジネスとして展開していたICTを組み合わせ「ものづくりソリューション」として、製造業向け支援ビジネスの強化を推進している(関連記事:富士通、製造業支援を強化――3Dプリンタ試作やビッグデータ分析、製造受託も)。「VPS」はその仮想検証ソリューションの中の核となるツールだ。
「VPS」は、従来試作機ベースで行われていた設計検証、生産準備、ドキュメント作成を仮想試作機上で行うことができる仮想シミュレーションツール。3次元CADによる設計データを基に最終的な組み立て工程の動画まで作成できるため、試作検証の大幅なコスト削減が可能である点が特徴だ。現在までに400社への導入実績があるという。
富士通 産業・流通営業グループ ものづくりビジネスセンター長の永島寿人氏は「富士通のものづくりソリューションは、富士通のモノづくりをリファレンスとしている点が特徴。例えば島根富士通では、競争の厳しいPCで競争力のある製品を生み出すために、VPSを含むツールを駆使し徹底したコスト削減を実現している。そういう一気通貫での実践事例を持つことが強みだ」と話している(関連記事:富士通のPC工場、勝利の方程式は「トヨタ生産方式+ICT活用」)。
新バージョンは新たに、組み立て動画の質を高めつつ、作成時間の削減を実現したことが特徴だ。
従来バージョンでは部品同士の干渉は確認できたが、治具などの干渉が確認できなかったため、シミュレーションでできた動画についてもその通りには組み立てられないようなケースも発生していた。そのため、手動で編集するプロセスが多く発生していた。そこで新バージョンでは、組み立て業務で使用する治具や工具、手などの干渉も確認可能とし、手戻りの数を大幅に削減できるようになった。
さらに、分解図の表示や“逆付け”などの注意喚起のため、組み立て段階と異なる状態を表示できるローカルショット機能を追加。注記の自動配置、スナップショットへの挿入も可能で、組み立て動画の品質向上を実現している。
デジタルプロセス 取締役 VPSビジネス部長の山田洋一氏は「2年前のバージョンアップで組み立て動画の自動作成機能を搭載し、約1000部品の製品の組み立て動画であれば約3時間で作成できるようなった。しかし、これはさまざまな修正作業が必要で、修正サイクルを何周も回して完成させるため、その部分に時間と手間が掛かっていた。今回のバージョンアップにより、自社で試験運用したところ、この修正プロセスを半分以下にできた」と手応えを語る。
また新バージョンでは、組み立て作業対象部品の部品番号・名称・材質・大きさなどの属性情報により、ルール化した作業情報を一括で挿入することなどが可能だ。例えば、製品内で使われているビスやボルトなどの締結部品を部品番号で判別し、あらかじめ登録した組み付け時間・締め付けトルク・使用工具といった組立作業情報を一括挿入できることで、定型入力作業が大幅に改善できる。
その他タッチパネルに対応したことで、タブレットなどからVPSの操作が行えるようになっている。
また従来は、無償ビュワーは機能を限定したもので3D形状を見ることにのみ利用ができたが、今回ビュワーはほぼ全て無償とし、編集・作成機能を求める場合のみ有償版の購入が必要な形に販売体制を変更した。価格は「VPS V15L14 組立動画」が98万円(税別)、「同 Standard」が400万円となっている。販売目標は今後3年間で6000ライセンスだという。
山田氏は「今回ビュワーの無償化を実現したことで、より多くの企業にVPSの価値を訴えていきたい。既に導入している400社の中でもまだまだ入る余地があると見ており、6000ライセンスのうち50%が既存、50%が新規の顧客だと見込んでいる」と話している。
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