トヨタIT開発センターと情報通信研究機構は、テレビホワイトスペース帯の車車間無線通信とコグニティブ無線ルータを組み合わせて、災害地で必要な情報を車によって伝搬し、インターネットなどの広域ネットワークと接続するシステムを開発し、実証実験に成功したと発表した。このシステムが実用化されれば、大規模な災害時に公衆通信網が途絶えても災害地のさまざまな情報を車を介して伝搬、共有できるようになる。
トヨタIT開発センター(以下、ITC)と情報通信研究機構(以下、NICT)は2013年10月15日、テレビホワイトスペース帯*1)の車車間無線通信とコグニティブ無線*2)ルータを組み合わせて、災害地で必要な情報を車によって伝搬し、インターネットなどの広域ネットワークと接続するシステムを開発し、実証実験に成功したと発表した。このシステムが実用化されれば、大規模な災害時に公衆通信網が途絶えても災害地のさまざまな情報が車を介して伝搬、共有できるようになる。
*1)テレビホワイトスペース帯:放送用に割り当てられているが、地理的条件や時間的条件によって他の目的にも利用可能な周波数帯のこと(関連記事=「その周波数帯ちょっと借ります」、NICTがホワイトスペース通信の実証に成功)。
*2)コグニティブ無線:無線機が周囲の電波環境を認識し、その状況に応じて他のシステムに干渉を与えることなく無線資源を使用して利用者が所望の通信を行えるように、基地局や端末を再構築して無線通信を行う技術のこと。NICTは無線通信機能を複数備え、電波状況に合わせて最適なサービスを選択できるモバイル・ルータを2013年5月に発表した。
開発したシステムの情報伝搬の仕組みは、まず、共有したい情報をWi-Fi対応スマートフォンに入力することから始まる。スマホに入力した情報は、近くのWi-Fiを搭載した車に渡される。情報を受け取った車が移動するとWi-Fiを介して他のWi-Fi搭載車に情報が渡され、それが繰り返される。その後、長距離の大容量の情報が伝送可能なテレビホワイトスペース帯の車車間無線通信機が搭載された車(例えば地方自治体の車)に渡されると、次にテレビホワイトスペース帯の車車間無線通信機が搭載された車が見つかれば、またさらに渡し、インターネットが使えるようになると、クラウドサービス上にアップロードすることが可能となるというもの。このシステムは、ITCが開発した。
両者では、「交通網の機能が完全に復旧しない状態でもテレビホワイトスペース帯の車車間無線通信を使うことにより、大量の災害地の情報が遠くに転送できることで、よりスムーズに情報の共有化が進むことを期待できるのが特長」という。
災害地で集約した情報をクラウドサービスにアップロードするには、NICTが開発を進めているコグニティブ無線技術を用いて、通信状況が混乱している中でもインターネット接続を行えるようにした。
なお、両者は「テレビホワイトスペース帯の車車間無線通信技術を使った災害情報の伝搬を実際に行うためには、テレビホワイトスペース帯を有効に活用するための技術的条件の検討や、テレビ放送などへの干渉を確実に回避するためのホワイトスペース判定方法など、多くの課題が残され、それらの解決に向けた活動が必要」としている。
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