昨年(2012年)開催されたHot Chips 24では、初日に3D実装のチュートリアルを開催し、Xilinx社、UMC社、Qualcomm社、AMD社など3D実装の状況の発表がありました(図9)。
現在、IC業界では水平分業化が進んでいます。ICは微細化が進み製造装置設備投資額が莫大なものとなり、相当数のICを製造しないと投資が回収できなくなっています。
しかし、微細化レースに後れを取ると、すぐに競合に淘汰されてしまいます。そのため、常に微細化に向けて設備投資と技術投資が継続できる企業しか生き残れません。いくら売れるICがあっても、1社だけの製品製造では設備投資を償却し、次々と微細化に向けて新しい投資を続けられません。
一方、多くのICベンダは設計とマーケティングに特化し自社で製造はしません。いわゆるファブレスベンダです。Rambus社など、ICの一部の回路だけを販売するIP企業も多くあります。
この代表的な会社はARM社でしょう。ARMのCPUはスマートフォンを始めとして多くのSoCに使われています。
いまだに工場を持ち、設計から製造、マーケティングまでを1社で行う垂直統合型では自社のICしか製造せず、製造量が少なく設備投資が行えません。
いまの日本のエレクトロニクス会社の不調はこのような垂直統合に固執した経営者の責任も小さくありません。XilinxやAlteraも自社ではICチップは製造していません。さらにICパッケージはまた別の会社が製造しています。
このような多くの会社が製造にかかわっているなかで、TSVを使ったインタポーザの検査、製品検査で問題ができた場合の原因の切り分け、各社の原因の範囲などが問題になります。
試作や研究レベルでは各社の技術も確立しておらず、不良品が出るのは当然です。この段階では不良や問題が出ることは、かえって歓迎することです。不良が出ることにより、不良原因を追究し、実生産での対応ができるようになるからです。
しかし、実生産になれば、歩留まりの低下は生産コストに反映され、避けなければなりませんし、損害をどの会社が負担するかの実際問題となります。
Nintendo Wii UではIBMのCPUとAMDのGPUをルネサス エレクトロニクスがMCM化した部品を使っています(図10)。
Wii UでもこのMCMで問題が発生した場合、問題の切り分けに非常に苦労したということです。AMDのGPUをルネサス エレクトロニクス、任天堂の協力で、問題切り分けのためのテスト信号をピンで、外部に出したり工夫して量産化にこぎつけています。
Hot Chips 24ではXilinx社がTSVを使った2.5D SiPのビジネスモデルと各社の役割分担を具体的に紹介しています(図11)。
日本の企業の発表は技術紹介か一般論が多く、このような具体的なビジネスモデルの紹介はあまりありません。これは、日本の企業がビジネスモデルを考えずに開発をしているからではないでしょうか?
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