SAPは、需給業務計画策定および調整を支援するクラウドアプリケ―ション「SAP Sales and Operations Planning powered by SAP HANA」を発売した。
SAPジャパンは2013年8月6日、サプライチェーンのデータを統合・分析し、需給業務計画の策定や調整を支援するクラウドアプリケーションの新製品「SAP Sales and Operations Planning powered by SAP HANA」(以下、SAP S&OP by HANA)を発表した。
「S&OP(Sales and Operations Planning:販売および操業計画)」とは、経営層や、生産・販売などサプライチェーンにかかわる業務部門が、部門をまたいで情報を共有し、需給業務に関する意思決定速度を高める仕組み。サプライチェーン情報に財務情報などを結び付けることで、財務的な価値を明確にし、より正確で素早い経営判断を下せる。一方で現場での取り組みが企業財務にどれだけ貢献しているかを可視化でき、現場意識の向上につながることも特長だとされている(関連記事:日本のモノづくりのアキレス腱「利益率」を改善する近年型/発展型S&OPとは?)。
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S&OPそのものは、20年以上前に提唱された概念で、既に欧米では多くのグローバル企業で導入が進んでいる。しかし、製造部門の現場力が競争力の源泉となってきた日本企業では「製販会議」などの仕組みが先に定着し、経営色の強いS&OPの導入は、それほど広がっていないのが現状だ。
しかし、景気の大幅な変動や東日本大震災、タイの大洪水など、経営に影響を与える変化が頻発する一方で、グローバル化により経営環境は複雑さを増している。そのため、従来日本企業が取り組んできた製販会議などの仕組みだけでは、需給調整を時差なく行うことが難しくなってきた。
このような中で再び「S&OPへの注目度が高まってきている」とSAPジャパン バイスプレジデントでクラウドファースト事業本部長の馬場渉氏は指摘する。「アジア圏でのクラウド関連の案件の7割がS&OP。日本企業からの引き合いも多く、アジアの生産拠点の需給業務計画を最適化させたいというニーズは高い」(馬場氏)。
SAPでは、従来ERP(Enterprise Resource Planning)内でもS&OP機能を提供してきたが「ERP外の情報を統合するには専用ツールであるべきだ。またクラウド化により柔軟に状況変化に対応できる利点などを提案する」(馬場氏)ことから、新たにSAP S&OP by HANAをリリースした。
新たにリリースしたSAP S&OP by HANAは、営業情報、生産・供給情報、財務情報などを全て統合し、戦略計画と実行計画を連動させて立案することが可能。クラウドベースであるため、導入決定から数週間で利用を開始できる俊敏性を持つ他、数カ月ごとの自動更新で最新機能やテンプレートを活用できる。
さらにインメモリプラットフォーム「SAP HANA」上で処理を行うため、膨大なデータを素早く分析でき、リアルタイムでシミュレーションが行える。「売上高最大化モデル」や「利益最大化モデル」など、決まったシナリオを当てはめ、そのためにはどのように事業運営すべきかという指標を示す「シナリオ計画」なども標準で搭載している。
また、今回の新製品でポイントとして挙げるのが、ソーシャルコラボレーション機能だ。SAPジャパン ソリューション本部 アプリケーションエンジニアリング部 ビジネスエンジニアリング ダイレクター 原尚嗣氏は「いくら経営に必要な情報だと言ってもそのデータが持つ文脈を把握しなければ正しい計画や意思決定は行えない。こうした文脈まで把握する仕組みとして社内ソーシャル機能を埋め込んでいることが特長だ」と強調する。
SAP S&OP by HANAでは、SNSなどと同様のインタフェースで、需給業務計画などの情報やグラフなどを簡単に引用でき、データを基にした意見交換などが簡単に行える。
価格については非公表だが「従来の計画ツールの5〜10分の1程度で導入できる」(馬場氏)。「従来は需給業務計画や需給調整に最適なツールがなかった。クラウド化により導入期間や価格を抑えることに成功した。まずは試してもらい、効果があるかどうか検証してもらいたい」と馬場氏は話している。
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