今回の6代目は、ロングボディをベースに開発を進め、米国で大きな市場を持つショートボディと、中国市場向けに新たに設定したスーパーロングボディを派生させている。ラインアップは、排気量3l(リットル)のV6ディーゼルエンジンを積む「S350ブルーテック」、排気量2.2lの直4ディーゼルエンジンに出力20kWのモーターを組み合わせた「S300ブルーテックハイブリッド」、排気量4.7lのV8ガソリンエンジンを積む「S500」、排気量3.5lのV6ガソリンエンジンに出力20kWのモーターを組み合わせる「S400ハイブリッド」の4モデル。トランスミッションは7段変速の自動変速機である「7Gトロニック」となる。
常にSクラスには最新の技術が投入されてきた歴史があるだけに、6代目もとにかく最新技術の満艦飾という風体だ。中でも特に注目すべきは、「インテリジェント・ドライブ」なる部分的自動運転と、「マジック・ボディ・コントロール」と呼ぶ姿勢制御だろう。
インテリジェント・ドライブでは、全ての運転操作が自動になるわけではないものの、渋滞のような特別な状況化において効果を発揮する。時速60km以下の速度域であれば、先行車両を追従したり、自動でブレーキやアクセル操作を行ったりしてくれるのだ。周辺360度を映すステレオカメラ、長距離と短距離のそれぞれに対応するレーダーなどのセンサー類を満載し、車両周辺の状況を認識する。これらのセンサー情報を基にアクティブセーフティ(予防安全)を実現するとともに、自動運転にも応用する。
ほとんどの事故を防げそうだが、万が一の事故に備えてパッシブセーフティ(衝突安全)もより充実させた。シートベルトエアバッグを新設し、サブマリン現象(事故などで衝撃を受けた際に座席に乗員の体が沈み込んでしまい、シートベルトの間から抜け出してしまう現象)を防ぐため、後席の座面にもエアバッグを追加した。Sクラスに使われる2200の特許のうち660が安全システムに関するものだという。
もう一方のマジック・ボディ・コントロールも興味深い装備だ。まず、ステレオカメラによって50msごとに路面をスキャンして、路面の凹凸を認識する。そして、この情報から想定される路面状況に備えて、事前にサスペンションのダンパーを制御するのだ。従来は、路面から衝撃を受けた後でその力をどう収束させるかがダンピングの質につながっていた。この装備では衝撃を受けたときにダンパーに加わる力を予測し、適正にダンパーを制御する。
燃費性能も見事だ。ハイエンドモデルの「S500」は、最大トルク700Nm/最高出力455hpの走行性能を発揮する。その一方で、走行距離100km当たりの燃料消費量は、S400ハイブリッドが6.3l、S350ブルーテックが5.5l、S300ブルーテックハイブリッドに至っては4.4lとコンパクトカー並みに良好だ。CO2排出量に置き換えると、「S300ブルーテックハイブリッド」は115g/kmと2015年の規制をクリア。さらに今後は、CO2排出量が75g/km以下となる「S500プラグインハイブリッド」の投入も予定している。
パワートレインを構成するシステムに新規性はないのに、これほどの燃費をたたき出せた最大の理由は、軽量化と空力性能の向上だ。軽量化に関しては、アルミと高張力鋼板のハイブリッド構造の採用により、ボディサイズは拡大しているものの、ホワイトボディ(車両骨格部品を組み上げた状態)で100kgもの軽量化に成功した。ねじり剛性を50%も向上させつつ、である。そして、50万時間のシミュレーションと1000時間の風洞実験で実証した結果、Cd値は0.24となった。メルセデス・ベンツブランドの乗用車の中でも、「CLAクラス」の0.22に次ぐ第2位である。
空力性能の向上で大きな役割を果たしたのは、冷却が不要なときにはラジエーター背後のシャッターを閉鎖できるクーリングフローシャッターである。また、大型アンダーカバーを設けて、ボディ下面の整流を行った。これらの対策は空気抵抗だけではなく、ノイズの低減にも貢献している。
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