年収は、「あなたの価値」に対する会社の評価です。評価が厳しい・セコい会社はどこかのタイミングで見切る必要があるかもしれませんが、「あなたの価値」が高まらないと年収は伸び悩むことになります。「あなたの価値」と、「あなたの価値」に対する会社の評価。年収を増やしたいのなら、この両輪が上手く回る環境を見つけることです。
IT業界の転職事情として聞いた話になりますが、リーマン・ショック以前、「この会社に転職すると年収が上がりますよ」という助言に従って、2〜3年で有名な外資IT企業への転職を繰り返していたエンジニアがいたそうです。転職のたびに年収は増えましたが、その結果として身に付けられたスキルは「外注管理」だけ。「この人でないとできない」というスキルは何も残りませんでした。リーマン・ショックで転職を余儀なくされた時、そのエンジニアはどこの企業にも採用してもらえず、それこそ年収が半分以下になる企業でないと応募すらできないような状況に陥ったそうです。
あまりにでき過ぎた話なのですが、これは本当にあった話なのです。そして製造業のエンジニアにも当てはまる話になります。
例えば大手企業から中小・ベンチャーに転職すれば、年収は下がる可能性はありますが、担当する業務領域は途端に広がります。「回路の一部分だけ」を設計していたのが、回路全体の設計を任され、ハード専門だったのに制御用のソフトウェア開発まで担当するようになることだってあります。逆の場合は担当領域が限られてくる分、前職以上の専門性が求められ、大手企業が蓄えてきたノウハウ、組織としての動き方を学ぶことができると考えられます。
目先の「年収アップ」にこだわり過ぎず、長期的な視点から「自らの価値を最も伸ばせる職場はどこか」と転職について考えてほしいのです。そもそも転職するべきかどうか、転職するならどんな企業に転職するべきなのか。短期的な「年収アップ」ありきで考えるのではなく、長期的な「あなたの価値」が最も伸びる環境、あるいは「あなたが仕事に求める大切なこと」が実現できる環境はどこなのか。そんな視点を持って転職先を考えてくれる人が1人でも多くなってほしいと願っています。
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