2012年2月、中小製造業関連の有志だけで実施されるイベント「全日本製造業コマ大戦」が開始。以来、続々と開催された地方場所のハイライトと動画を紹介する。
2012年2月2日に「テクニカルショウヨコハマ 2012」(会場:パシフィコ横浜)の「心技隊」ブースの一角で開催された「全日本製造業コマ大戦」。製造業にしては、ちょっと奇抜な感じのするイベントが開催されるとの情報を事前に聞き付けたテレビや新聞雑誌がこぞって取材し、製造業の中で話題となりました。その後は、さまざまな“地方場所”(地方大会)が続々と開催されました。いまでは、コマ大戦は日本全国の地域振興や中小製造業の横連携を盛り上げる一大イベントに成長しました。
2013年2月7日、「テクニカルショウヨコハマ 2013」の心技隊ブース内で開催する全国大会に向け、地方予選が既に開催され、出場チームも決定しています。
心技隊は、横浜市内の中小製造業経営者を中心に構成される異業種グループです。木型メーカー ミナロの緑川賢司氏をリーダーとして、中小製造業を元気にするためのさまざまな活動に試行錯誤で取り組んできました。その活動の一環として、このコマ大戦が企画されました。
コマ大戦は、中小製造業関連の有志だけで実施されるイベントです。実況や解説も中小製造業の方で、オンライン中継は中小製造業を支援する2人組企業 enmonoが携わっています(一部、製作にプロの方が携わっているものもあります)。
ライブ中継されたコマ大戦の様子のほとんどは、YouTube上にアーカイブが残されています。このイベントも、そして2012年も、ちょうど節目ということで、この記事では各地方大会のハイライトとともに、関連動画の数々をまとめて紹介してみることにしました。
関連リンク: | |
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⇒ | 全日本製造業コマ大戦記事一覧 |
⇒ | 心技隊流「未来を創るヒント」 |
動画紹介の前に、コマ大戦のことをよくご存じでない方向けに「コマ大戦の基礎知識」を簡単に紹介しておきましょう。
コマ大戦のルール自体は、非常にシンプルです。チームごとで外形がφ20mm以内のコマを製作して(外注してもよい)、ケミカルウッドの土俵上で、どちらが先に「外におちるか」あるいは「回転を止めてしまうか」、対決させるだけ。子どもでも分かるルールです。
出場チーム数に応じて、トーナメント戦のときもあれば、リーグ戦のときもあります。優勝チームは、出場チームのコマを総取りできます。
φ20mm以内のコマになっているかどうかは、愛知県北名古屋市のゲージメーカー クリタテクノがコマ大戦のために製作した非常に精密なゲージで測定されます。
詳しいルールについては、コマ大戦の公式サイトをご覧ください。
以降は各場所のハイライトと共に、大会の様子を収めた動画を紹介していきます。大会を重ねることで、ライブ中継の見せ方も改善されていっています。ひとまず、お住まいの地域に関する大会からご覧になってみるのはいかがでしょうか。あなたの知人が登場しているかもしれません。
“全ての始まり”、記念すべき第1回である横浜場所は2012年2月2日に開催されました。精密旋盤加工のプロ 由紀精密による、「高密度、低重心、高精度」という、“強いコマ”の基本に忠実に製作されたコマが優勝しました。こちらは以後、出場するチームの“お手本的存在”のコマとなりました。「チタン製逆さコマ」の西村金属、品質工学を駆使して設計したコガネイ、対戦前に天に祈りだす「チーム義貞」(両毛ものづくりネットワーク)、新潟の赤い切削戦士「ケズルンジャー」(東港工機 加藤修さん)といった、個性あふれる企業チームが登場しました。
2012年3月23日の茨城場所は、茨城県 県北地域(日立市、ひたちなか市など)の若手経営者を対象とした通年型ゼミナール「ひたち立志塾」の卒業生たちが主催する講演イベント「ひたちより元気を発信! 〜中小企業sns活用シンポジウム〜」の懇親会として開催されました。
2011年3月11日の東日本大震災では、立志塾卒業生の企業、その仲間の企業も被害を受けました。当時は光和精機製作所の佐藤貴之さんなど立志塾卒業生がTwitter上で県外へ支援の呼びかけを行い、心技隊メンバーもそれに応えて支援してきました。地域を超え、バーチャルとリアル、両方でつながり支援し合ってきたのです。
この講演イベントでは、「製造業は予想したよりもかなり早く復帰できた。依然、事態が深刻なのは食品加工業。風評被害がひどい」など、日立近隣の企業事情が語られました。
茨城場所にはMONOistも出場しています。コマは、長野県伊那市の若手設計者集団 スワニーと、横浜場所の横綱である由紀精密という強力コラボで製作されました。回転したときだけ花弁が開くという美しいギミック・コマです。MONOistチームは残念ながら、1回戦で敗退してしまいました。
茨城場所で優勝したのは、長野県内のCADユーザーコミュニティー「SWCN」。代表選手は、SWCNメンバーであるスワニーの橋爪良博さん。決勝戦直前までギプス(レンタル品)を付けて戦いました。そのおかげで優勝できたのでしょうか。違うでしょうね。
以後、橋爪さんは、サービス精神あふれるパフォーマンスで、コマ大戦の名物選手になりますが、実況の“黒椙田ゆうじ”さん(エコックス 椙田祐司さん)には「面倒くさいヤツ」扱いされ続けることになります。
2012年7月28日開催の信州場所は、SWCNが主催する勉強会イベント「SWCN 4th Impact」の懇親会として実施されました。歌手のAOI(あおい)さんもゲストとして登場。実は彼女の実家は、長野県茅野市の町工場です。この出演がきっかけとなり、AOIさんの歌う「sweet sweet pain」は彼女の所属事務所の許可の下、コマ大戦の公式ソングとなりました。実は、製造業やコマのこととは全く関係ない、恋愛の曲なのですが、細かいことは気にしないでくださいね。
さてSWCNはメカ設計者の方が多く在籍するコミュニティーということもあって、信州場所は設計面で工夫を凝らしたコマが目立ちました。SWCNの中に「信州コマ倶楽部」が立ち上がり、コマ設計を通じて品質工学やシミュレーションを学ぶ講座も開催しています。
信州場所の優勝は、茨城県水戸市から来た大塚製作所。MONOistチームが茨城場所で対決した企業でした。
イベントの基調講演は、ミナロの緑川賢司氏が登壇しました。
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