しかし、このような「データの統合」や「見える化」のプロセスは確かに重要ですが、経営層が意思決定するには不十分といえます。
「ビジネスS&OP」の実践に限らず、「こうしたらこうなるのではないか?」というシナリオ、仮説を立て、実データを基に結果をシミュレーションする、しかも、その結果をすぐに取り出せれば、より迅速な決定を行うことができます。
これまではこの部分を経営層の「経験」と「勘」に頼っていたかもしれません。意思決定はあくまでも人間が行うことですが、「勘」を裏付けるデータとして、シミュレーションができるというのは、ツールを活用する大きなメリットの1つです。
さらに、意思決定した後、実際に事業がどのように進んでいるか、業績をモニタリングできることも経営層にとっては重要でしょう。
これまでの3つのレベルについて、それぞれどのような情報システム、ツールが活用されているかを図3にまとめました。自社が現在どのレベルにあるのか、どのレベルを目指したいのかで必要な業務改革、ツールは変わってきます。レベル1から徐々にスタートでき、最終的にレベル3まで活用できるツールを選ぶのも1つの手です。
ビジネスをとりまく環境の変化スピードは、近年ますます速まっています。相場の急変、天災や政治不安のような想定外の状況に対応できず、ビジネスチャンスを逃している企業も多いのではないでしょうか? これまでと同じスピードでビジネスを進めていては、競合他社に勝つことができません。毎月毎月、自社ははたしてもうかっているのかどうか、ということを意識していないと、最悪のケースでは倒産の危機に直面することになります。
サプライチェーンマネジメントに関しても、戦略や財務と絡めて、迅速かつ適切に意思決定をしていく必要があります。しかし実際には、現場の「職人」任せで、意思決定すべき人が行っていない可能性があります。筆者らが日々対話する製造系企業の経営層の方々も危機感を感じ始めています。また、必要な情報を得る方策の模索も始めている印象です。
これまでは多少在庫がだぶついていても「売れるだろう」と楽観視できましたが、市場状況が変化しつつある昨今では、大きなリスクとなり得ます。
モノ(数量)とカネ(売上、コスト)の双方を統合し、俗にいう「売れ筋」や「死に筋」を見極めながら、経営判断としてのブレーキとアクセルをうまく使いこなしていかねばなりません。そして、各社のレベルに応じて、より効果的・効率的にプロセスを進めていくためのツール、情報基盤を用意する必要があるといえます。
次回は、ツールをうまく活用して「ビジネスS&OP」を実現しているグローバル企業の実例をご紹介します。
インフォアジャパン株式会社
ビジネスコンサルティング本部 ビジネスコンサルティングマネージャー
酒井ひろみ(さかい ひろみ)
「Sales & Operations Planning」コーナーでは、基礎情報などの解説記事を紹介しています。併せてご覧ください。
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