大都市圏のマンション化率は2割前後と高い。だが、エネファームは本来一戸建て用の機器だ。どうすればよいのだろうか。
大阪ガスは、大阪ガス実験集合住宅NEXT21において、2009年2月から出力700WのSOFCを3台運転して、集合住宅への設置を検証している。将来の製品化を狙った実験だ。
東京ガスの取り組みも始まった。同社は、2012年3月14日、エネファームや太陽電池などを組み合わせて、従来よりもエネルギー使用量を約4割削減できるマンション型集合住宅を完成させた*3)。集合住宅版のスマートハウスともいえる。「機器を新規開発するというよりも、市販の製品を利用して、エネルギー効率をどこまで高められるかという実証実験だ」(東京ガス)。
*3) 経済産業省は「次世代エネルギー・社会システム実証事業」を日本国内の4地域で進めている。東京ガスの試みは「横浜市スマートシティプロジェクト」(関連記事)の1プロジェクト「集合住宅版スマートハウス実証試験」であり、2012年4月から開始する。東京ガスの社宅として3年間データを収集する。
24戸からなる鉄筋コンクリート地下1階、地上4階建ての集合住宅(横浜市磯子区)に、PEFC型の市販のエネファーム10台と太陽熱利用ガス温水システム「SOLAMO」(屋上設置型約10m2とバルコニーガラス一体型1台)、太陽光発電システム(約25kW)などを配置した。さらに、住棟全体で熱と電力を融通することでピークカット対応も進めるというものだ(図7、図8)。
「一戸当たり2〜5人、24戸で70人が暮らす。エネファームは負荷が平準化されると効率が高まるため、4戸ごとにエネファーム2台を配置した」「残りの4戸はSOLAMOだけを利用してエネファームと比較する」(東京ガス)。どちらも熱利用の3割を自給することが目的だという。
集合住宅版スマートハウスの実証試験であるため、蓄電と電気自動車(EV)の利用も進める。「地下に容量40kWh、出力10kWのニッケル水素二次電池モジュール1台を設置し、EV充電器とも接続した。1台のEVを住人がシェアして使う」(東京ガス)。電池は停電時にも照明用途などに使える。
なお、東京ガスは、再生可能エネルギーと都市ガスを利用することで、年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロになる「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」(ZEB)を2030年に実現する予定だ。既存の省エネビル、東京ガス「港北NT(ニュータウン)ビル」において実証する計画だ(図9、関連記事)。
太陽電池設置比率は新築分譲マンションでも既に2%に達している。次は、エネファーム設置マンションが普及するのかもしれない。
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