続いて、エネファームを推進する5社、アイシン精機と大阪ガス、京セラ、長府製作所、トヨタ自動車は、効率の高い「エネファームtype S」を製品化したことを2012年3月13日に発表、4月27日から大阪ガスが販売を開始する(図3)。type Sは家庭の消費電力の約8割をカバーできることをうたう。発電効率が46.5%と高く、発電効率と熱回収効率を合計した総合熱効率も90.0%に達する。
2012年4月から販売を開始するエネファーム(新型PEFC、後述)と合わせて、2012年度には6000台(前年比162%)を販売する目標を立てている。「うち700〜800台がtype Sの販売台数だ」(大阪ガス)。
京セラは図4に示したセルスタックを開発した。水素を取り込んで酸素と反応させる中核部分だ。アイシン精機とトヨタ自動車はセルスタックを組み込んだ発電ユニットを開発し、アイシン精機が量産する。長府製作所は排熱利用給湯暖房ユニットを作る。
京セラによれば、エネファームtype Sの性能実現のために、セル(図5)とセルスタック(図6)の構造を工夫したという。セルスタックはセルを複数集めたモジュールだ。セル単独では電圧が1V程度と低く、発電能力も数Wであるため、100本以上のセルを直列に接続したセルスタックを使う。
SOFCの研究開発において、セルスタックの製造に初めて成功したのは米Westinghouse Electricだった。同社のセルはホース状の円筒型セルである。構造が単純で製造も容易だからだ。熱応力に強く耐久性も高い。現在でも発電所級の大規模SOFCでは円筒型セルを利用する。しかし、京セラによれば、家庭用機器では円筒型は向かない。なぜなら、円筒型セルを積み重ねてセルスタックを作ると体積の利用効率が悪く、装置が大型化してしまうからだ(出力密度の低下)。
正方形の板を積み重ねたような平板型セルでは出力密度を高くでき、小型化に向く。しかし、熱膨張率の異なる材料を積み重ねて高温で運転するのは難しい。熱応力に弱い構造だといえる。
京セラのセルは同社が開発した円筒平板型であり、2つの方式の良いところ取りをした形状である。まず外観が板状なので、積み重ねてセルスタックにしたときも体積を有効利用でき、装置を小型化しやすい。京セラのセルの断面は陸上競技で使うトラックのような形をしている。燃料ガス(水素と一酸化炭素)はトラック内部に空けられた8本の円柱状の穴を通る。トラックと円柱の間には支持体が詰まっており、トラックの外周部は酸素イオン(O2−)を通す薄膜で覆われている。空気中から酸素を取り込む仕組みだ。熱応力に強い構造である。
SOFCはPEFCと比べてこのように優れた性能を誇る。PEFCはもはや時代遅れなのだろうか。そうではない。
大阪ガスはSOFCを利用したtype Sとほぼ同時、2012年4月2日に新型PEFCの発売を開始する(価格は260万4000円)。「PEFCは熱の発生量が多いため、お湯をたくさん使う家庭に向いている。熱を多く使う家庭と電力を多く使う家庭に売り分ける」(大阪ガス)。
新型PEFCの発電効率は従来のPEFCよりも3.5ポイント高い38.5%。総合効率はSOFCをも上回る94%である。これは熱の回収効率を従来のPEFCよりも10.5ポイント高めたためだ。
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