本気を出した東電、年間300万台のペースでスマートメーター導入へスマートグリッド

スマートメーターとHEMS(Home Energy Management System)の普及が急速に進みそうだ。東京電力はスマートメーターを一般競争入札で安価に調達し、年間300万個のペースで既存の電力計と交換していく。経済産業省はスマートメーターとHEMSとのインタフェースを2011年度中に確定。どの電力会社を利用していても、自宅で直接電力情報を利用できるようになる。

» 2012年02月29日 20時40分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]
本気を出した東電、年間300万台のペースでスマートメーター導入へ スマートメーター

 電力需給が切迫する中、家庭や企業の消費電力をほぼリアルタイムに取得できるスマートメーターの導入が望まれている。

 東京電力は、2012年2月28日、「スマートメーターの仕様に関する提案募集の開始について」という一見平凡な発表を行った。この発表の意味は大きい。導入ペースが決まり、調達コストの引き下げを図ったからだ(図1)。

 スマートメーター普及にあたり、従来とは異なるプロセスを取り入れた。まずスマートメーターの仕様をメーカーから募る。2012年3月には現行仕様を開示し、その後、2012年10月に東京電力の電力計としては初めて一般競争入札で納入業者を選定する。「これまでの電力計の納入単価は非公開であるため、調達コストの圧縮効果をはっきり示すことはできないが、一般競争入札によって、スマートメーター全面展開時に単価1万円を目指している」(東京電力)。

図1 スマートメーターの発注フロー 2012年10月に入札、2013年7月に納入を予定する。出典:東京電力

 交換対象となる電力計は「低圧」(一般家庭)と「高圧」(企業や工場など)を合わせて約2700万台に及ぶ。従来の納入価格が目標額の2倍だった場合、約2700億円の調達コスト削減につながることになる。

 「(第1回目の)調達数量は図1にある第1期(前半)で約300万台、第1期(後半)で約400万台を予定する」(同社)。

10年で全面交換へ

 スマートメーターへの交換スケジュールはどうなっているのだろうか。正式なスケジュールは2012年3月に公開する「総合特別事業計画」で決まる。

 以下に紹介するのは現時点のスケジュールだ。スケジュールは低圧と高圧とで異なる。「高圧については今後5年で全数を交換する計画だ」(同社)。

 低圧については、2012年度下期に現在の実証試験を拡大する形で、東京都小平市や清瀬市などを対象に、約9万台を業務検証の形で取り付ける。2013年度には一部地域で先行導入する。2014年度からは検定有効期間の満了(検満)に伴う入れ替えを開始し、10年程度で低圧分全てを交換するという。

HEMSとの接続はどうなる

 スマートメーターは単体では、節電や電力制御の効果が半減する。HEMS(Home Energy Management System)と連携して、消費電力をいつでも確認でき、場合によっては自動的に機器の出力を制御できるようにならなければ電力需給バランスの改善に役立たない。

 経済産業省はHEMSや、HEMSとスマートメーターのインタフェースの標準化を進めている(図2)。同省が2011年11月に設置した「スマートハウス標準化検討会」は2012年2月24日に「JSCA国際標準化WGスマートハウス標準化検討会とりまとめ」を公開している。

図2 インタフェース標準化のメリット スマートメーターを軸に新しい産業が立ち上がっていく。出典:経済産業省

 決定内容は多岐にわたるが、特に重要なのは次の3点だ。

 まず、スマートメーターとHEMSを連携させるインタフェース仕様を、2011年度中に決定する。次に、「Bルート」対応スマートメーターを推進する。最後に電力会社が出力するデータフォーマットを統一する。

 検討会ではスマートメーターを「Aルート」「Bルート」「Cルート」の3種類に分けて検討してきた。Aルートは電力会社が集約した電力情報をインターネット経由で家庭などが受け取る方式だ。Bルートはメーターに直接HEMSを接続して電力情報を受け取れるものをいう。Cルートは第三者経由で電力情報を受け取る形だ。

 Bルート対応かつ電力会社のフォーマットを統一するということは、どの電力会社のスマートメーターであっても、HEMS機器をつないで利用できるようになることを意味する(図3)。

 「検討会の決定事項や国の政策動向は注視しており、これに対応したスマートメーターを導入しようと考えている。ただし、どの地域でいつ導入するかは未定だ」(東京電力)。

図3 利用する通信プロトコル スマートメーターとHEMS、HEMSとスマートメーターと電気機器の間の通信プロトコルは「Echonet Lite」に準拠することを決めた。なお、欧州では「KNX」、米国では「SEP2.0」の採用が予定されているため、今後標準化や海外での展開を進めなければ、日本が孤立する可能性もある。出典:経済産業省

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