現在広く使われているリチウムイオン二次電池は、正極にリチウム金属酸化物を用い、負極にグラファイト(炭素)を採用したものが多い。正極材料を変えることで電池の容量や安全性を高める開発が盛んである。負極にスズ(Sn)やシリコン(Si)を用いて容量を拡大しようとする研究も進んでいる。
リチウムイオン二次電池の動作を見ると、性能改善策が理解しやすい(図2)。パワー密度を高めるにはLi+(リチウムイオン)がより移動しやすくなるよう改善すればよい*3)。負極、正極とも工夫が必要だ。エネルギー密度を高めるためには、負極、正極が取り込むことのできるLi+の数を増やせばよい。
*3) 電池全体の内部抵抗を低減する必要があるので、端子から電極までの電気抵抗を低く保つ設計なども重要である。
電池の寿命(充放電サイクル数)を高めるにはどうすればよいだろうか。現在のリチウムイオン電池の充放電サイクル数は500〜2000回程度だ。これはLi+が、正極のリチウム金属酸化物に出入りするごとに正極の結晶構造が乱れていくことによる。従って(結晶)構造が乱れにくい材料を使えばよい。
イーメックスの高分子・ガラス電池の構造や動作はリチウムイオン二次電池と似ている。ただし、正極には導電性高分子(樹脂)を用いており、負極は金属硫化物ガラスだ。さらに電荷を運ぶ物質が多少異なる。
「高分子・ガラス電池が通常のリチウムイオン二次電池と異なるのは、Li+の挙動だ。新電池では、Li+ではなく、電解質中のPF6−が正極の導電性高分子との間で、ドープ/脱ドープを起こす」(イーメックスの瀬和氏)。パワー密度が高くなるのは、このドープ/脱ドープ反応を高速化できたからだという。「導電性高分子を製造する際に、分子間にすき間ができるような製法を確立している。この製法を使わないとパワー密度が高くならない」(瀬和氏)。
寿命が長くなる理由も同じだ。高分子材料は柔軟性があるため、ドープ/脱ドープ反応を繰り返しても構造が劣化しにくい。
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