2012年の夏も、電力使用制限令に従った一律の節電体制が組まれるのだろうか。このような節電は負担が大きく、柔軟性に乏しい。そこで、東京電力はスマートグリッドの考え方を取り込んだ節電の実証試験を始める。
「2011年の夏の電力需給を乗り切ったのは大口から一般の方まで節電への理解と協力によるものであり、感謝している。顧客を訪問すると、『空調を中心に長期間、長時間の我慢を必要とする負担の大きい節電だった』という意見が多かった」(東京電力)。
2012年の夏も電力会社の供給能力は大きく改善できないだろう。また、政府の電力使用制限令に頼るしかないのだろうか。
電力の需給状況にかかわらず、恒常的な節電を続けるのではなく、「今後は需給状況の厳しい時間帯に合わせて、必要に応じて円滑に節電に協力していただけるような『スマート節電』に取り組む」(東京電力)。
スマート節電の前提となるのは電力需要カーブの予測だ(図1)。過去のデータや天候、曜日などから、翌日や翌週の電力需要カーブを導く。東京電力の供給能力を超える場合は、図2のように顧客に「需要抑制のお願い」を通知する。
顧客への連絡はリアルタイムではなく、翌日または翌週の予測値に基づいて、前日、前週に行う。需要抑制自体は、顧客側で進める。実際に節電した値を東京電力に通知することで、電気料金の割引を受けられるという形だ。
東京電力は2012年2月1日、2月上旬から3月末にかけて、スマート節電の実証実験を行うと発表した。
2011年12月、東京電力は大口顧客9事業者と「スマート節電を考える会」を設立している。今回、実証実験に協力するのはこの9事業者だ。うち、7事業者を公開した。業種も幅広い。
スマート節電の取り組みは、スマートグリッドがめざしているものと同じだ。電力の需要予測や需給バランスの計算はもちろん、電力事業者側で需要家側の電力消費を制御するデマンドレスポンスや時間帯別料金などは全てスマートグリッドで実現を目指す内容だ。
国や一般企業もスマートグリッドの実証実験を続けている。だが、2012年の夏には間に合わない。そもそも電力の供給量が足りない。そこで、スマートグリッドの考え方を「手動で」実行するスマート節電に取り組んだ形だ。
東京電力は実証試験の結果を受けて、2012年夏の大規模導入を目指す。
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