オフィスの消費電力の見える化が進んでいる。自発的な節電を促すためだ。さらに効果的にするにはどうすればよいだろうか。社員のPCから消費電力を制御できるようにすればよい。日本ナショナルインスツルメンツはこのように考え、見える化と電力制御の取り組みを一歩進めた。
東日本大震災後、政府の電力使用制限令が与えた影響は大きかった。東京電力管内と東北電力管内の大口需要家向けに15%の抑制率が示され、他の電力会社管内や小口需要家にも節電の動きが広がっていった。
点灯している照明を半減する、空調の設定温度を高くするなどの取り組みで企業や家庭が節電に協力したものの、特に企業内では節電手法が硬直的で苦労した方も少なくないはずだ。
わざわざ照明スイッチのある場所まで歩いていって、周囲を見回し、多数のスイッチを順に切るというのでは、なかなか節電しようという気にもならない。快適に節電できる手段が欲しい。
日本ナショナルインスツルメンツは節電プロジェクトへの新しい取り組みを進めた。単なる見える化だけではなかなか節電が進まない。社員が自ら参加するメリットがあるシステムが助けにならないだろうか。「例えば自分の席に近い照明を、自分のPCから直接入り切りできれば、快適に節電に取り組めるはずだ」(同社)。
2011年7月から節電プロジェクトを立ち上げ、見える化ソフトウェアと制御ソフトウェアを開発、2011年7月中旬以降、システムの運用を開始した。
照明用と各社員の卓上のコンセント、エアコン室外機の3種類の消費電力を計測し、リアルタイムに表示した。各PCからスイッチを操作する機能も組み込んだ。
節電効果は大きく、2011年8月の消費電力(照明と社員用コンセント)を、同7月と比べて22.8%節減できた。小まめな照明の入り切りを簡単にすることが、節電によく効くということだ(図1)。
フロアの「島」ごとに照明を入り切りできることだけが特長ではない。フロア全体を3区画に分けて、それぞれの区画ごとに省エネ目標の達成度が分かるように作り込んだ。達成度が最も高い区画はポイントがたまり、それに応じてインセンティブを与えるなど、より節電を促す仕組みも盛り込んだ。
同社が運営する「Green LabVIEW Community」ではこのような節電用ソフトウェア部品を公開しており、オフィスや家庭のユーザーとアプリケーションや節電ノウハウを共有している。
今後は冬の節電に備えて、空調室内機や室外機を制御できるよう開発を進めるという。冬季の消費電力のうち、約6割が暖房の負荷によるというデータから優先順位を判断した。
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