プリウス以上の車を作るには環境技術 記事ランキング(4)(2/3 ページ)

» 2012年01月17日 17時05分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]

小型化と車内スペース確保は両立できる

 アクアの開発では、車体を小型化しつつ、軽量化や車内スペースを広く取ったことに興味を引かれました。小型化することで、車内スペースが広くなった。これがアクアの特長です。

 まずは軽量化の工夫です。

 「アクアはハッチバック車であるため、プリウスよりも300kgほど車体が軽い。HVなのにもかかわらず、素の状態で車重が1050kgしかありません。車体が軽いため、モーターの体格や電池の量などを減らすことができました(図3図4)。それでも足りない部分に新技術を盛り込みました」(田中氏)。

図3 アクアのハイブリッド用ニッケル水素二次電池 電池のセル自体は量産効果や品質維持を考慮して、従来のプリウスと全く同じものを利用している。ただし、186セルあったセル数をアクアでは約3分の2の120セルに抑えている。東京モーターショー2011での展示。
図4 プリウスとアクアのハイブリッドシステムの比較 プリウス(左)とアクア(右)の二次電池(奥)とエンジン・トランスアスクル(手前)の比較。アクアの二次電池は、148mm短くなり、11kg軽くなった。エンジンは51mm短く、16.5kg軽い。一部黄色く見えているトランスアスクルは21mm短く、8kg軽い。

 例えばモーターに巻く銅線です。エンジンを小型化しつつ、パワーを増やすには銅線の巻数を増やし、密に巻くことが重要。アクアでは巻数を増やすだけでなく、銅線の形状にも工夫を凝らしました。プリウスの銅線は断面が円形、アクアでは四角くしています。円よりは四角の方が無駄になる空間が減る。このようにして小型でパワーのあるモーターを実現しています。

 車内スペースの確保は、軽量化と同時に実現しました。電池の小型化が鍵です。小型化の目的は、プリウスではラゲージルームに置いていた電池を、シート下に置くためです(図5)。プリウスは12Vの鉛蓄電池を搭載しており、やはりラゲージルームの一角を占めていましたが、アクアではこれもシート下に置いています。

図5 アクアのラゲージルーム 床面に電池などを配置していないため、床が深く、容積を大きく取ることができた。

 乗り心地の確保のためにはどのような工夫を凝らしたのでしょうか。「重量物をなるべくセンター、それも低い位置に配置するように心掛けました」(田中氏)。アクアはプラットフォームが1種類しかなく、エンジン排気量も1種類。このため、車種ごとの調整が必要なく、重心を極限まで下げられたそうです。すると、安定性が高まり、ロール(車長方向の回転振動)モーメントが小さくなる。ロールモーメントが小さいと、バネやアブソーバーの減衰力を抑えることができ、乗り心地が良くなるという工夫です。

 「シートの下に燃料タンクをレイアウトすることで、シートのクッションを同クラスの車よりも、長くすることができました。長時間座るなら、長いシートで少しリクライニング気味にすることで、あまり疲れを感じなくなります」(田中氏)。

 燃費の良い車を作るよりも前に、快適に乗車できるコンパクトカーを作り上げる。これがプリウスを「超える」車作りなのでしょう。

 今回のランキングでは、電力や電池関係の記事も注目を集めました。製品や技術というよりも制度が問題になったのが、今回の特長です。制度が問題になるとはどのようなことなのでしょうか。

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