東京モーターショーで、プロダクトデザイナーが各社のコンセプトカーをウオッチ。「Fun-Vii」や「BMW i」を見て考えたこととは?
「世界はクルマで変えられる」というテーマで開催された今回の東京モーターショー2011(会期は2011年12月2〜11日)。今回は、前回の2009年で“欠席”が多かった海外(輸入車)メーカーの出展も目立ち、ドイツ、フランス、イギリスと、少々寂しいながらも国際的イベントらしい体裁も戻ってきた。会場も幕張メッセから東京ビッグサイトに変わり、都心から近くなった今回のモーターショーに、プレスデイ初日に出掛けてきた。
今回は個別のクルマ技術はあまり突っ込まずに、プロダクトデザイナー視点から、クルマやブースから感じるブランド戦略を中心に眺めていくことにした。
他国で開催される国際モーターショーと比較しても、多分にお祭り色が強いともいわれる東京モーターショーだが、今回は企業ごとの色合いが以前より出ている回のようにも感じられた。特に欧州勢と日本勢と比較すると、同じようなテーマを扱っていても、思考パターンや表現の仕方の違いが感じられた。
まずは言わずと知れた国内トップメーカーであるトヨタ自動車のブースから。
話題の「86(ハチロク)」を別とすれば、次世代車に対する考えは、「近距離移動:EV(電気自動車)」「中・長距離:当面ハイブリッドカー」、その先は「FCV(燃料電池車)」という方向を示す展示車の構成となっている。そのもっと先の未来には、「スマホみたいなクルマ」と表現しているメディア記事もあるコンセプトカー「Fun-Vii」があるという世界観なのであろう。
このFun-Vii、“カッコイイ”とか“ワルイ”とかを抜きにして、ネット上に公開されている、SF映画のような利用シーンのプロモーション映像を見ると、クルマ単体では成り立たず、インフラも込みでの環境整備がされないと機能しない「未来像」であることがうかがえる。そのような世界――クルマの“外側”に対して、トヨタがどのように関わるのかということが語られていないのは、少々消化不良で残念に感じるところである。
「まだまだ夢物語に近いなぁ」と感じたトヨタのFun-Viiとは逆に、真剣度を感じたのがBMWである。「BMW i」というサブブランドを起ち上げ、EVの「i3 コンセプト」とプラグインハイブリッドの「i8 コンセプト」という2つのモデルをアジア初公開として持ち込んできた。「i3 コンセプト」の方は、これまでBMWが「メガシティ・ビークル」としてその開発過程が小出しにプロモーションされていたものが、いよいよクルマの形に具現化された。
他方の「i8 コンセプト」の方は2009年に公開されたコンセプトカー「VISION Efficient Dynamics」をより量産へ近づけたモデルである。
「メガシティ・ビークル」は2015年までにニューモデル市場投入する計画であると、2010年2月の段階でアナウンスされている。
技術的な面から見た2台のコンセプトカーの特徴は、BMWが「LifeDriveアーキテクチャ」と呼ぶ構造であろう。これは、モーター、バッテリー、エンジンといった駆動系コンポーネントを組み込んだ「ドライブモジュール」と呼ばれるアルミニウムを主材料とするプラットフォームの上に、「ライフモジュール」と呼ばれるCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)製モノコックキャビンを載せ、そこに外板ボディパネルが装着されるというものだ。
見た目のデザインはどちらもコンセプトカーらしい、少し新しさのあるデザインで、ある意味分かりやすい。しかしBMW iは単なるコンセプトカーではなく、彼らは着々と量産への道を歩んでいる。例えばCFRPという素材では、「E46-M3」時代に限定車「CSL」のルーフへの採用から始め、その後の「E63-M6クーペ」「E92-M3クーペ」で量産の“練習”も一通り完了したということであろう。
BMW iのために、2010年の4月には、SGLグループとの合弁会社SGL オートモーティブ・カーボン・ファイバー(Automotive Carbon Fibers)社の設立をアナウンスしている。
と、モノづくりっぽいことを少し書いてみたが、それ以上にBMWの本気度合いを感じたのは、今回のモーターショーでのプレスリリースの中で、「BMW i ブランドの全体は車両とサービスからなる」と宣言しているところである。クルマだけでなくサービスの開発・提供を自社のみで行うのではなく、他社との提携によるサービスも取り込んでいくために、BMW i Venturesというベンチャーキャピタルを2011年初頭にニューヨークに設立している。現在は、米国・カナダ・ヨーロッパ・アジアの50以上の都市で、公共交通、駐車場の空き状況、エンターテイメントなどの情報をモバイルApp向けに提供している My City Way社と、個人が所有する駐車スペースや私道などを貸与するための、インターネット・プラットフォーム「Parking My House」の2つに投資しているとのことだ。
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