成功するメガソーラーの条件とは、日本商社がドイツで取り組むスマートグリッド(2/3 ページ)

» 2011年10月26日 16時45分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]

固定買い取り価格が70%に低下

 2つのメガソーラーを比較してみよう(表1)。発電所の規模は8倍に拡大、一方、総投資額は6倍強にとどまっている。このため、出力1MW当たりの投資額は8割弱に下がった*4)

*4)2010年5月時点の円ユーロ相場は、1ユーロ=約120円、2011年10月時点では約105円であるため、実際には出力1MW当たりの投資額は、8割弱よりもさらに下がっていることになる。

 1MW当たりの投資額を下げなければならなかったのは、ドイツがFITの買い取り価格を段階的に引き下げているからだ。1kWh当たりの収入が減るのなら、初期投資を抑えなければ利益を出すことはできない。


表1 2つのメガソーラーの比較 新しいメガソーラーでは、1MW当たりの投資額が8割弱に下がっている。これは固定買い取り価格が7割弱に下がっていることに対応するためだ。

 FITの買い取り価格を段階的に引き下げている意図は、次のようなものだ。もしも、買い取り価格が永久に変わらないとしたら何が起こるだろうか。メガソーラーに必要な太陽電池モジュールやパワーコンディショナー(インバーター)などの部材は、太陽光発電市場の広がりと共に、毎年価格が下がっている。これは誰でも見通せる簡単な予測だ。

 すると、メガソーラーを建設する時期を遅くすればするほど、発電事業者の利益が増える。これではいっこうにメガソーラーが普及しなくなる。FITの買い取り価格は引き下げていかなければならない。

 FITのもう1つの狙いは、技術革新の後押しだ。予測できるペースでFITの買い取り価格を引き下げることで、企業に対して、2つのインセンティブを与えている。1つは部材の量産技術の改良を促すこと、もう1つは太陽電池の高効率化を促すことだ。量産技術の改良によって、1kW当たりの太陽電池の価格が引き下がり、高効率化によって、単位面積当たりの発電量(売電量)が高まる。

どうやってFITに対応すればよいのか

 このようにFITに追従していくには、部材などメガソーラー建設に必要なコストを引き下げるか、太陽電池の効率を高めることが必要だ。

 双日はどのように対応したのだろうか。2つある。まず、メガソーラーの規模を8倍に引き上げることで、スケールメリットを生かした。「太陽電池モジュールを割安に入手できるだけでなく、それ以外にも発電所に必要な施設のコストを引き下げられる。ただし、ドイツでは広大な土地を取得することに制約があり、いくらでも規模を拡大できるわけではない」(双日)。

 太陽電池モジュールの選択がもう1つの対応策だ。採用した太陽電池モジュールは中国Yingli Green Energy Holdingから購入した。同社のシェアは世界4位(2010年時点)と高く、低価格で入手できる。太陽電池モジュールの種類は多結晶Si(シリコン)太陽電池であり、価格と性能のバランスが取れている。

 ドイツでどのようにFITが機能しており、どうすればFITに追従できるのかは分かった。それではドイツ以外の国に進出する場合はどうすればよいのだろうか。

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