――高価なCAEソフトを買うためには、上司や経営者の承認が必須だ。社内で広めていくうえでも、やはり社内で力のある人に協力してもらえるならありがたい。でも、シミュレーションのことをよく知らない人に対して、その良さを理解してもらうって、大変……。
JIKOさんは、どうですか。視点を変えて、何か。水出さんがいま、いいこと言っちゃったから、その後で言いにくいと思うんだけど。
普段の業務は設計者から依頼される解析案件を処理するのに手いっぱいで、経営層に向けての発信ができていません。
僕の前の上司は、経営者への発信を重視していました。「偉い人集めて「(お前らが)何やっているか、ちゃんと発表しろ」って。2カ月に1回ぐらい、そういう報告会やっていたのですが、それが嫌で嫌で……。大した成果も出ていないのに、報告会だけやらされて、という感じで。
だけどいま考えてみると、そういったことをやっていかないと、経営者に価値を分かってもらえないので、設計者展開の仕事がやりづらい。
いま一番問題なのが、やはりその辺がうまく、発信ができていないために、CAEの仕事の価値をうまく理解してもらえず、人員の調整弁的な扱いを受けていることです。
例えば、傷病で長期に休んでいた設計者などが、設計部門に復帰する前に一時的にCAE部門に所属したり、設計部門が忙しいからとCAE部門の人員を設計部門に異動させられたりなど。
そういうことはあるよねぇ。
かといって、外に対しては、「弊社はCAEに力を入れている」とか、そういうアピールもしてみたり。だけど設計者展開というのは、なかなか進まなくて。そのあたりがジレンマなところがたくさんあるのですけど、やはり、「旗振り役」「推進者」には発言力のあるリーダーが必要で、その人が中心になってやっていかないと。つまり、ある程度立場がある人(役職が高めな人)なんですよね。担当レベルだとなかなか話が進まない。
やっぱり、方針をトップダウンしないとね。ある程度(役が)上の方にお願いして――うちもそうだし、どこもそうなんだろうけど――「3次元やるぞ」「シミュレーションやるぞ!」と号令を掛けてもらってから、下が動かないと。そうすりゃ楽なのに。
そうなんです。
そこまでに持っていくというのも、僕ら日本のサラリーマン社会でいうと、「僕らの責任」になる。
やはり、上を説得していって、分かってもらいながら、(設計者にCAEを)広めていく土台を作っていくというのが難しいです。請負解析側は、設計CAE(設計から依頼される案件)の業務がほぼ9割以上になってしまっている中で、そういった展開が――重要だと思うのに――なかなかできないのが、いま、すごくつらいところなんですよね。予算もカットされて、残業もできないし、外にも出せない(外注できない)し。
でも仕事は、来る。
ははは、それはどこも一緒だよ。うちもそう。予算カットされると、実験できないじゃないですか。じゃあ、シミュレーションでやろうかってなる。だからシミュレーションの依頼が、ぱんぱん。緊急のモノを除いて、「順番待ち」にしちゃうけど。
だから、そんな状況を分かってもらう活動をしなきゃいけない。僕も今年は2回ぐらい役員室に怒鳴りこんでいったよ。「できねぇよ、そんなのっ!」って。上の人に現状を分かってもらわないと、やっぱり進まない。
上が分かってくれているんだったら、マシンやライセンスは買いやすいよね。
CAEのベンダーさんと話すと、「うちのは簡単にできます」って言われるのだけど、「いや、それは分かっているけど、人間が設定する時間と、マシンタイム(計算時間)があるよね?」って話。
例えばAとBとCというソフトがあったとして、トータルで考えると、どれがいいんですかって話をすると、「いやあ、ウチのはネ、設定が難しくてプロじゃないと使えない」って話をし出すの。
いや、確かにね、パソコン(PC)が解いている時間そのものは3分の1かもしれない。だけど、人間が関わったら、そうはいかないんだよね。つまり、人間が関わる時間を最小限にしたい。うちも解析マシンが何台もあるけど、それを(水出氏の部署の)2人の担当でまわさなきゃいけないんで。
数で勝負だよ、もう。
でも仕事がぱんぱんで無理というときに、じゃあ、「人なのか」「金なのか」って話になる。そこで、人やお金を外に出すと言うのは、すごく嫌いな会社なんですね。
どこもそうだと思うよ、日本の会社って。やっぱり、そういうふうに働き掛けて、これ結局、「ニワトリと卵」の話と一緒で、(人と金の)両輪だと思うんですよ。どっちが先かじゃなくて、両方やっていかないと、次はないのかなっていう気もしないこともないですよね。
ジレンマなのは分かりますよね。
ジレンマですよね。僕もそうだもの。
そうはいったって、難しいです。
上を味方に付けることと 、数で勝負。あと、いつも僕がセミナーで言うのは、「これ(CAE)は道具で、最後は人。サポート力ですよ」ってこと。サポートが良いベンダーと付き合わないとね。道具(ツール)がいくら悪くても、サポート力がすごいよければ済むこともあるから。
超っ大事だね!
だから結局、ベンダーさんとの関係もすごく大事だと思う。リセラー(代理店さん)さんも。彼らも、今日議論しているような方向へ一緒に向かせないと、何も変わらない。僕らのために働いてくれない。やっぱり、サポート力だと思うんですよね。結局仕事って、人なんで。だから、そういうところでいかに関係を作ってやっていくか。
うちはもう、AとBとソフトがあって、「こっち切って買い直そうか」とか、いまそんな議論してます……。
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