――会社のためを思っての活動も、ある立場から見れば、無駄なことに時間を費やしているように見えがちなのだろうか。
だから、究極の話、「CAEはないほうがいい」?
そーだね。
要するに、(解析専任部門は)サポートであり、間接部門なんで。
何というか……、「ないに越したことはない」。
ただ、そう考えると……、むなしくなってくる……。
そうだねぇ。
「消えてなくなるのがベスト」っていうところを目指さなければならないっていうところが……。
間接部門ではなく、直接部門としてCAEが成立しないといけないのかな、と?
私はそれを目指したいな、と。
要するに、「実験部隊としてのCAE」になるか、ならないか。いまは結局、間接部門になっちゃってるのが、「壁」なんですよね?
解析専任者は、いつでも設計開発者になれる。そうすれば、実質、直接部門になって、壁がなくなる。それが究極です。
(設計と解析を)行ったり来たりできる、ということ?
やっぱり、目的意識を共有するためにも必要だよね。プロセスや組織にも関わってくる話だけれど、壁を取っ払わないと、1つの方向が向けない。「この製品をいいものにしよう」って。「俺はシミュレーションだけやっていればいいや」という立場ではなく、(設計と)“一緒になる”部分も作っていかないといけない。そうしないと、おっしゃる通り、壁というのは、なくなっていかないのかもしれないね。
開発に携わると、「責任を取らないといけないから、やだ」っていう人も結構……(CAE専任者の中にはいるかも)(笑)。CAEだと、「何となく、難しいことをやっていれば、(責任から)逃げらるかな」っていう。
うんうん。僕も、設計職からいまのところ(技術支援室)に異動したときに、ちょっと違った意味だけど、肩の荷が下りたもの。「あー」って。
それ、あるねぇ〜。
じゃあ、水出さん!
「壁」っていう部分で行くと、いろいろあったんだけど……。うちは、製造部、営業部、品証部、技術部と全部門でチームを組むんです。最初にチーム員の一覧表を作り、そこの項目に「シミュレーション」もあるんです。要は「シミュレーションする人もチームに入れておいてね」という意味で。だけど、そこに担当者名を書いてもらえない(シミュレーションするチームは間接部門で、「解析専任部」という直接部門という認識ではないため)。シミュレーションチームとしては、「僕らは間接部門だけど、気持ちは直接部門だよ」というよう気持ちで仕事をしていこうよという思いでいます。
それでないと駄目だよね……。
そうやってきたからこそ、「これできない?」「あれできない?」と(解析の)依頼がよくくるようになった。
――次に水出氏は、もう1つ、重要な壁を挙げた。
例えば、CAEのソフトを新しくしたい、買わないといけない、というとき……、結構、高いよね……。そして、買うときにはトップ(経営層)から、「本当に効果あるの?」って、ROI(投資利益率)を求められるわけですよ。こうなると、「とにかく、俺におもちゃ買ってくれよ〜!」って感じだね。
(一同笑い)
まあ、おもちゃだね……(笑)。
(ROIの)想定はしますよ? 「想定では、うちの会社にとって非常に莫大な効果を生みますよ」と。だけど、ROIを求められても困るときもある。そこをどうやって、突破するか。……ウソをついて?
(一同笑い)
ウソなの?
ウソじゃないけど……。「どうやってそこを突破するか」というのが、ものすごく、壁。金額が上がれば上がるほど。
大きくなるよね。
金額が上がれば上がるほど、「実機相関(実測とCAE結果の相関)はどうなの」って話になる。ただ私たちが分かっているのは、「実機相関はない」ということ。もちろん全てのパラメータが入れられて、もしかして1週間ぐらいかかるかもしれないけど(大学の研究レベルは求められないし)、それなら実機相関できるかもしれないけど。
「『やれっ』て言うなら、やれるけど」という世界だよね。
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