キーノートにおいて、新しいパートナーシッププログラムが紹介されました。発表の中では見逃されそうな内容でしたが、よく考えるとキーノート全体の流れの中で大きな意味を持つように思えましたのでご紹介します。このパートナーシップはアップグレードに関するガイドラインを定めるものであり、具体的には、デバイスがリリースされてから18カ月の間は、最新のAndroidにアップデート可能であるとするものです。Androidの最新バージョンへの関心は高まる一方ですが、どのデバイスを買えばどれだけの期間どのようなバージョンアップのサービスが受けられるのかについては確実な情報が存在せず、いつ旧型になってしまうか分からない状況はユーザーのフラストレーションとなっていました。
プログラムの参加企業としては通信事業者がSprint、T-Mobile、Verizon、AT&T、Vodafoneの5社、デバイスメーカーがHTC、Samsung、Sony Ericsson、LG Electronics、Motorolaの5社という構成です。各社は、Androidの新機能とそのハードウェア要件について討議し、Androidデバイスの寿命ともいえるバージョンアップの回数と内容、そしてそのアップグレードが可能なハードウェアスペックを定めていくのです。
また、今回、内容について深くは語られませんでしたが、Android@Homeは実は最も重要な発表であったと考えます。Android@Homeはイニシアチブの名称で、家庭におけるあらゆるデバイスをAndroidアプリケーションから認識し、接続・通信できるようにするとのことです。実はこのようなアイデアはもう何十年も前からあり、昔も今も展示会では必ずと言ってよいほど目にします。長くネット家電と呼ばれ、今年のCESでもLGElectronicsがネット冷蔵庫を展示したり、SamsungはAllShareという家電をつなぐ仕組みを特設ブースを作って熱心に宣伝していました。ただし、これまでのところ、AV機器の相互接続性の向上といったレベルの成果は上がっているものの、残念ながらIT技術によって家電の利便性を根本的に良くするには至っていません。
このような現状を打破する力が、Android@Homeにはあるのでしょうか。あるかもしれません。なぜそう思えるのか。上述のAndroidに関するパートナーシップが鍵になると考えるからです。SamsungやLG Electronicsをはじめとする大手家電メーカーが、Androidを健全に成長させようとしています。その先には、SamsungやLG Electronicsがそれぞれ描いていたホームコンピューティングの実現も視野に入っているはずです。互いに競合ではありますが、Androidを担いでいるということでは確かにパートナーです。タブレット市場よろしく、ホームコンピューティングを確立させることで大きな市場が拓けるならば、お互いに伸びることが可能になります。そして、アップルという共通の敵に対抗できる有力な方法でもあるのです。
ともかく、何十年も実現しなかった構想です。Android@Homeの評価も、“近い将来”というスパンでは出せないのかもしれません。技術や社会の変貌が、思わぬ路線変更を強いることもあるでしょう。長い目で、Android@Homeの行く先を見届けましょう。
最近の展示会やカンファレンスはWebの情報が豊富なので、わざわざ会場に出向くよりもむしろブロガーの良くまとまったブログをいくつか閲覧する方が全体の様子を速やかに把握できます。Androidについて、次のサイトはよくまとまっています。
Google I/O 2011 Android関連セッションの5/10分要点だけ
http://blog.imho.jp/2011/05/google-io-2011-android510.html
Google I/O 2011 Android関連セッションの5/11分要点だけ
http://blog.imho.jp/2011/05/google-io-2011-android511.html
Google I/Oのツイッターアカウント
http://twitter.com/googleio/
セッションの動画はGoogleによって公開されています。
Google I/O:Sessions
http://www.google.com/events/io/2011/sessions.html
Android developers:Videos
http://developer.android.com/videos/index.html#v=WGIU2JX1U5Y
Picasaで公開されているGoogle I/O 2011のフォトギャラリーが意外と楽しめます。
Picasa:Google I/O 2011さんの一般公開ギャラリー
https://picasaweb.google.com/googleio
金山二郎(かなやま じろう)氏
株式会社イーフロー技術本部長。Java黎明(れいめい)期から組み込みJavaを専門に活動している。10年以上の経験に基づく技術とアイデアを、最近はAndroidプログラムの開発で活用している。
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