Cortex-A9の魅力を示した平田氏の講演を受け継ぎ、ザイリンクス マーケティング本部マーケティングマネージャーの橘 幸彦氏は、同社の28nmFPGA製品とExtensible Processing Platformの詳細を語った。
「Xilinx 7」と称されるザイリンクスの28nmFPGAは、「Artix-7」「Kintex-7」「Virtex-7」の3ファミリーからなる。Artix-7は現行の低価格品「Spartan-6」の後継で性能を3割向上。kintex-7は現行の高性能品「Virtex 6」と同等の性能ながらコストが半分、最高で業界初の200万ロジックセル(LC)を実現したVirtex-7は新ハイエンドとなる。橘氏は「3ファミリーはアーキテクチャが統一されており、同じ組み込み機器の中でローエンド品からハイエンド品までスケーラブルに適用できる」と強調した。
続いて橘氏は、Xilinx 7で採用した最先端技術を解説した。まず低消費電力性では、「28nm世代になると全体の6〜7割を占める」スタティック消費電力を減らすため、台湾TSMCの製造プロセス技術「28nm HPL」を活用し、40nmプロセス比で消費電力を50%も低減した。「従来なら消費電力との兼ね合いから犠牲にしていたアプリケーション性能をその分高められる」(橘氏)。
一方でXilinx 7は従来に比べて2倍以上の容量増加を達成し、Virtex-7に至っては285〜2000K LCの容量を誇る。「シリコン・インターポーザ」と呼ぶマイクロ回路基板上で複数のFPGAダイスライスを緻密な接続点でインターコネクトし、大容量化を実現しているのだ。橘氏は「われわれのFPGAはもともと、ASMBL(Application Specific Modular Block)と呼ぶ独自アーキテクチャにより機能ごとブロックセルが整理されているから可能だった」と話した。
大容量化したXilinx 7では当然、内蔵トランシーバも高速化している。例えば、Virtex-7は通常版でも13.1Gbps×最大80だが、さらに28Gbps×最大16、13.1Gbps×最大72で2.8Tbpsもの帯域を確保できる「Virtex-7 HT」も用意している。橘氏は「Virtex-7 HTのスペックは、1チップで400GEインターフェイスに対応するなど具体的な用途を想定している」と話した。
こうしてXilinx 7について解説した後、橘氏は同製品と前述したARMのCortex-9を統合したExtensible Processing Platformを紹介した。
同製品のプロセッシング部は、コア/NEONとも2系統のCortex-9 MPCoreに加え、メモリコントローラやGbE/USB/CANなどのインターフェイスがハードワイヤードされている。それと拡張性、柔軟性を担うプログラマブルロジック部のXilinx 7をAX1インターフェイスで統合。AX1は、ARMのインターコネクト仕様「AMBA」を拡張したものでザイリンクスとARMが共同開発した。
橘氏は「画像処理を伴う最近の組み込み機器は通常、MPUとは別にDSPやASIC/ASSPを搭載しているが、MPUとFPGAをワンチップ化したExtensible Processing Platformならば、コスト、消費電力、柔軟性でメリットが大きい」と話したうえで、具体的な用途をいくつか示した。カメラやセンサから取り込んだ信号を高速解析しなければならない車載の運転支援システム、インテリジェント機能を持つ監視カメラ、画像処理を伴う医療機器のほか、ワイヤレス基地局などの通信設備にも十分に耐えられるとする。
橘氏によれば、3月にもExtensible Processing Platformの詳細を発表、2011年内に最初のデバイスを出荷する計画という。“Cortex-A9+Xilinx 7”のタッグは業界に大きな影響を与えそうだ。
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