3つ目のセッションは、データセンターで利用するサーバやネットワーク機器などの電源として直流を給電するシステムに関するものだ。講演者は、日本無線の戸澤洋二氏(共通技術本部総合技術センター 理事、技術士 電気電子部門)である。
多くのIT機器は電源装置を内蔵し、商用交流電源を内部で直流に変換して内部の回路へと供給している。しかし、個々の機器の電源装置での変換効率はまちまちで、必ずしも高いものではない。これに対して、機器を直流給電に対応させ効率を高めようというのが直流給電の考え方だ。
直流給電には48Vなどの低電圧のものもあるが、大きな電力が必要なデータセンターなどでは大電流を流すため配線も太いものが必要になる。日本無線では細い電源配線ですむ340/380Vで供給する高電圧直流給電(HVDC)システム「FRESH HVDC」を開発した。FRESH HVDCはシンプルで高効率なAC-DC変換回路を採用し、サーバラック側でDC/DC集中電源によって低圧にすることで、従来のAC給電方式に比べて10〜20%の省電力化が可能という。また、高電圧直流給電では遮断時のアーク放電や人体の感電時の安全性が問題となっていたが、技術的対策によって解決したとのことだ。
セッションの最後は、NTTデータのデータセンター運営とそこでの経験を生かしたエネルギー利用効率に関するコンサルティングビジネスの話だった。講演者は、NTTデータの小林誠氏(ソリューション&テクノロジーカンパニービジネスソリューション事業本部データセンタビジネスユニット課長)である。
最近では、エネルギー利用効率やCO2排気量を管理する「環境経営」が必要になるが、そのポイントは、エネルギー消費の多いデータセンターにある。NTTデータ自身が巨大なデータセンターを持ち、そこでエネルギー利用効率を高める努力をしている。これを同社では「グリーンデータセンター」と呼ぶ。クラウドとしてこのデータセンターを利用することで、間接的に高い効率の「環境経営」が可能になるという。また、同時にリスク対策や社員の管理業務からの開放など、組織内システムのクラウド化にはさまざまなメリットがあるという。
環境セミナー、トリの特別講演はグリーン・グリッドの日本技術委員会副代表の藤江義啓氏が行った。グリーン・グリッドは、データセンターのエネルギー利用効率改善に取り組む業界団体。データセンターのエネルギー利用効率を示すPUEなどの指標は、このグリーン・グリッドが定義したものだ。講演のタイトルは、「最新省エネルギーデータセンター構築の事例とポイント〜グリーン・グリッド データセンター・アワード応募事例から〜」である。
藤江氏は、来場社がPUEなどを理解していることから、基本的な部分の解説は簡略化してざっと述べたあと、2010年10月に発表したグリーン・グリッド データセンター・アワードで、最優秀賞を受賞した日立製作所、および優秀賞の富士通の事例を紹介した。
グリーングリッドでは、現在、データセンターのCO2排気量から見たエネルギー効率化の指標であるCUE、および、冷却水などの水の消費量からみたエネルギー効率の指標であるWUEを策定中であるという。
データセンター・アワードは、既存データセンターの効率化の努力を評価するもので、その取り組みと継続的な改善が評価される。日立の事例では、データセンターのリアルタイムな電力消費管理を可能とした上、屋上の緑化や散水といったさまざまな手法を使って効率化を行っていた。
富士通では、施設エンジニアリング部門や空調技術開発部門など社内横断的な活動を行い、IT機器だけでなく、空調設備でも効率化を行い、単一データセンターだけでなく、活動を各地のデータセンターで行い、汎用性、即効性のある手法を実施したことが評価された。
2社の事例はグリーン・グリッドの会員企業以外には公開されていなかったもの。データセンターの効率化を継続して進めるには、システム部門と施設部門の協力や地道な積み重ねが重要という内容だったが、高い効率を実現した事例の紹介という事もあって、長時間のセミナーの最後の講演だったが、熱心に聞き入りメモを取る姿が多く見られた。
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