プロトラブズのオマケ教材が、ちょっとすごいミネソタ生まれの電脳加工屋 プロトラブズのCEOが来日!

小ロット生産専門の部品加工カンパニー 米プロトラブズの本社CEOが来日。CEO自らが、新サービスの情報や、同社の面白オマケ教材について語る。

» 2010年10月14日 00時00分 公開
[小林由美,@IT MONOist]

 小ロット生産専門の部品加工カンパニー 米プロトラブズの本社CEO ブラッド・クリーブランド(Brad Cleveland)氏が、関西 設計・製造ソリューション展(会期:2010年10月6〜8日)の視察も兼ねて来日した。クリーブランド氏は、四半期に一度は日本に訪れることにしているという。それだけ同社が日本のビジネスを重視しているということだ。今回は、訪日中のクリーブランド氏に、同社の近況や、ユニークな取り組みについて話を聞いてみた。

 「ミネソタでこの事業の立ち上げたばかりのころ、『アジア圏で生産した方が安いではないか』とよくいわれたものです。最近は逆に、それに否定的な意見を持つ方が増えました。コミュニケーションの滞り、品質低下、納期遅れなどを考慮し、総コストで見ると当社のサービスを利用した方がいいといわれます」(クリーブランド氏)。

 プロトラブズの加工サービスは、3次元CADのデータをWebサイトにアップし見積もりを請求でき、発注もそのままWebから行える。納品は宅配便。注文から納品まで、メールと電話だけで展開できる。同社は業務を可能な限り自動化することで、コストダウンと時間短縮を図っている。

 プロトラブズは経済不況の中も業績を順調に伸ばし、米欧を含めた全社の2010年(カレンダー年)度売上は6千万ドル超で、前年比40%以上の伸びが見込まれているという。「顧客である製品設計者が賢かったことの結果が、当社のビジネスに反映されたと考えています。不況下でも地道に設計に取り組み続け、賢く製品を開発していき、新製品を生み出す。そうしたサイクルを彼らはきちんとまわしていました。設計者の方々は、いまのことだけを考えるのではなく、将来のことも考えながら、製品の開発をしていただくといいのではないかと思います」(クリーブランド氏)。

モールドと切削のサービスは変わらないが

 「世界中の設計者が製品を世の中にもっと早く投入し、成功できるよう、これからも支援をしていくのみです」(クリーブランド氏)。

米プロトラブズ 本社CEO ブラッド・クリーブランド(Brad Cleveland)氏

 同社の樹脂射出成形と切削加工のサービス2本柱については、基本的に今後も変えずに、それらの拡張、改善を地道に繰り返していくとクリーブランド氏はいう。両サービスでは、より大きく、複雑な形状にも対応できるよう改良に取り組んでいるとのことだ。また1年後ぐらいには、成形サービスで、現在の樹脂材料だけではなく金属材料にも対応すべく準備中。切削サービスについては現在、樹脂とアルミのみだが、真ちゅうなどほかの金属材料の加工にも今後対応する予定だ。

 RP(ラピッドプロトタイピング)については、同社のポリシーが「あくまで“リアルな”部品の提供」ということで、対応は考えていないとクリーブランド氏はいう。

 同社顧客は、形状を見るだけならRP、実験に使うならプロトラブズのサービスと、併用されるケースもよく見られるという。

 なお、同社サービスの詳細については、同社Webサイトや過去記事でご覧いただきたい。

プロトラブズのおまけ教材がすごい

 プロトラブズは、問い合わせ時やサービスにかかわった顧客に対し、部品加工に関する教材を無償で配布している。これが、ちょっとすごい。これらを手に取って観察するだけで、成形の基本や用語のイメージがしやすくなる。特に、「こことここにスライド入れないと」「あそこにヒケが出やすい」「それはアンダだから抜けないよ」――といった成形にまつわる基本的な会話がどうも苦手、という射出成形部品初心者な人にはうってつけの教材だ。

 プロトラブズ設立初期に作った部品の仕上げ状態を確認する教材を起源とし、以下のようなさまざまな教材が誕生していった。

1.デザインキューブ

 射出成形品を設計するうえでの注意点を形にしたという「デザインキューブ」。

デザインキューブ(送付されてきたときの状態)

 この教材では、「ボスの肉厚が厚いと、その裏にヒケが出る原因になる」「材料の流れる方向に対して下流に貫通穴があると、ウェルドライン発生の可能性」といったことが、直感的にイメージできるようになっている。樹脂製の教材と、説明書記載の部位ごとに振られた番号と照らし合わせて学習できる。

デザインキューブのクローズアップ

 従来は周囲にある現物やサンプルを1つ1つ持ってきて、現象を確認するしかなかった。この教材のように複数の現象が集約されていれば、これ1つ身近に置いておけば、うろ覚えだった成形技術の確認がすぐでき、理解が浅い人にも説明が容易にしやすくなる。この教材は個人情報を登録(無料)することで無償でもらえる。

デザインキューブは閉じられる(もちろん、ラッチも教材の一部)

2.射出成形金型ミニチュア模型と説明書

 次に紹介するのが、キャビとコア、イジェクタ、スライド機構、そして成形された部品がセットされた金型のミニチュア模型。ひとまず、がちゃがちゃ教材を動かし、説明書を読んでいけば、金型の仕組みの基本が分かる。

射出成形金型ミニチュア模型と説明書

 この教材では、例えば成形部品に刻印された文字はアンダカットになっていて(文字が凸)、スライドを1つ入れて抜くようになっている。この教材は個人情報を登録(無料)することで無償でもらえる。

黄色が成形部品、赤がスライド機構と型(赤いパーツに、「PM」の文字が反転して彫られている)
サイドアクション(赤)を移動させてから、イジェクタ機構(白)で突けば取れる

3.図解 樹脂部品設計

 こちらは冊子。ヒケやそりを防ぐための基本などをまとめたもの。この冊子は個人情報を登録(無料)することで無償でもらえる。

図解 樹脂部品設計

3.レジンパズル

 この教材では、ABSやPPなど主要な9種類の樹脂特性について、視角や感覚で比較することが可能だ。各樹脂の説明が書かれた冊子付き。同社に見積もりを請求し、パーツをアップロードするともらえる。

カラフルなレジンパズル
組み立てる前のレジンパズルと説明書:結構、難しい

 このような面白教材は、これからもっと増えていく予定とのことだ。「実は……2011年中、クールで楽しい感じで、しかも設計者のためになる新たな教材を企画しています。設計から樹脂材料の選定、外観までを一連で学べるものを考えています。ホワイトペーパーも併せて提供する計画です。……まだ、詳しくは話せないのですが」(クリーブランド氏)。具体的に何かはまだ秘密、とのことだ。

 「日本のビジネスは成長していて日本法人も多忙です。もちろん、(教材の用意より)お客さまから依頼された仕事への対応が優先ですけれど(笑)」(クリーブランド氏)。

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