PLMの仕組みを言葉で表すと次のようになります。
となります。
この仕組みを実現するのがPLMシステムです。CADデータやBOMなどはインプットやアウトプットの1つなのです。
PLMシステム構築で最も重要な部分は「必要な人に必要な情報のみを提供」という部分でここが前回のコラムでご紹介したコンテキスト(業務のシナリオ)と呼ばれる部分に当たります。
このような、部門を超えて組織が効率的に動くためのアプローチ方法はPLMシステム固有のものではなく、一般的にはプロセスアプローチと呼ばれ、ISOやCMMI、PMPやPMBOKなどのマネジメントプロセスにも使われています。
ISO9000:2000には「組織が効果的に機能するためには、数多くの関連し合う活動を明確にし、運営管理する必要がある。インプットをアウトプットに変換することを可能にするために資源を使って運営管理される活動は、プロセスと見なすことができる。一つのプロセスのアウトプットは、多くの場合、次のプロセスヘの直接のインプットとなる。組織内において、プロセスを明確にし、その相互関係を把握し、運営管理することと併せて、一連のプロセスをシステムとして適用することを“プロセスアプローチ”と呼ぶ」(注)とあります。
注:JIS Q 9001 0.2項「プロセスアプローチ」より引用。
もっと分かりやすく説明すると、料理を作るプロセスではインプットは食材になり、アウトプットは調理された料理になります。料理になるまでの調理している活動がプロセスに当たり、おいしい料理を作るためにはいい食材(インプット)を使って正しく調理(プロセス)することでおいしい料理(アウトプット)につながるというわけです。
このようなコントロールを実現し、正しい情報(バージョン、変更差分、関連情報)を各製品開発業務に渡し、各プロセスの作業内容をシステム内にノウハウとして蓄積するとともに、アウトプット(後工程のインプット)として提供する仕組みを、プロダクトのライフサイクルにわたって情報を円滑につなげていく仕組みがPLMシステムとなります。
もう1つ、PLMシステムを考えるうえで重要なポイントがあります。
多くのPLMシステムは、プロダクトのライフサイクルにわたる情報を一元管理するシステムとして説明されています。
このような説明の中では、業務に必要なさまざまな情報はすべてPLMシステムで統合管理されているので、設計者はPLMシステムを使えば製品開発に必要な情報を簡単に見つけることができ、製品開発業務を効率化できると紹介されています。
しかし、ここで1つ注意することがあります。
PLMをシステムを中心に検討を始めてしまうと、どうしても管理できるデータの種類や仕組みが中心になってしまうという点です(図2)。
製品開発にかかわるすべての情報をPLMシステムを通して入手できるということは大変いいことなのですが、ここで終わってしまうと利用者にとっては「いろいろな情報が入っているけど、どれが自分に必要な情報なのか分からない」という状態を作ってしまいます。
「CADとシームレスに連携できます」や「BOMが簡単に作れます」といった機能が充実していることはシステムを構築する際の1つのポイントではありますが、PLMシステムを使えるシステムにするにはもうひと手間掛けて、利用者に対し必要な情報を、いかに整理して提示するのかということも併せて検討する必要があります。
いろいろな機能が備わっているけど自分が必要な情報を見つけ出すのに手間が掛かるシステムより、機能は少なくても簡単なオペレーションで素早く欲しい情報だけが入手できる仕掛けの方が、知的作業の効率化には効果が高いということです。
これがPLMシステムにとって重要なコンテキスト部分で、この部分の実現は企業によって異なるため、PLMシステムのカスタマイズ要求となる部分でもあります。
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