日本企業の中国進出を支援してきたベンダ企業が見た中国本土の製造業事情とは? 日本企業、中国企業の違いや市場の変化などを事例を交えて紹介していきます。
当初この原稿を書いているうちに、ホンダ、トヨタといった日本を代表する製造業の中国工場でのストライキが、次々に報道されるようになりました。次第に生活程度が上がっていく中国の中で、労働者の待遇改善に対する要求は想定されていたことではなかったのでしょうか?
その答えのヒントが、日々の中国からのニュースの中にあります。日本以外の外資系の製造業の工場では、同様なストが同時に発生してはいない、という事実です。
その原因は、過去、中国国内で見られた反日運動でしょうか? わたしはそうではないと思います。日本でも同様ですが、労働者のストは、労働者自身が働く企業の業績を悪化させるという労働者自身の骨身も削る行動だからです。
では、日系製造業とそのほかの外国資本の工場との違いはなんでしょうか?
一言でいえば、現地化の進展の違いです。ここでも、当社も含めて、日本人特有の島国根性が企業のグローバル化を阻んでいるといえます。ホンダの関連工場の従業員が持つストのプラカードをご覧になられましたか?「同じ場所で働いていながら、日本人は、中国人の50倍の給与をもらっている!」と書かれていました(直近の新聞報道では、中国市場で、圧倒的にシェアを持つ建機のコマツが、現地法人の社長をすべて、中国人にして幹部育成制度の施行を発表しています)。
2010年に入って、最低賃金(月額)の調整が全国31省(自治区・直轄市を含む、以下同じ)の半数に当たる16省で行われたが、調整後の最低賃金も平均賃金の40〜60%とされる妥当な水準には達していない。政府は所得格差を縮小するため、低所得層の底上げを含む中国版「所得倍増計画」を検討する可能性もある。「世界の工場」の低賃金時代は終わろうとしている。(JETRO 通商弘報2010年6月24日)
こうした問題が日本で喧伝(けんでん)されると、またもや中国人とはこういうものだとか、彼らと付き合うためには、特別な配慮が必要なのだというような意見が噴出します。
しかし、当社が中国に本格的に進出してから5年間、小さな会社とはいえ、多くの中国の方と接してきている経験から、国にはその国特有の事情や考え方はあっても、多くの人間が、勤勉に働き、成功して、豊かな暮らしをしたいと考えていることには変わりはないという確信があります。
一方、当社の日本本社で働く中国人とのコミュニケーションでも感じるところですが、彼らは日本語は上手にしゃべれても正確に意思を伝えることはなかなかできません。
システム導入の成功のポイントとしてもよくいわれることですが、1人だけで構わないから、日本人としっかり意思疎通のできる現地の人材を育成、その人を通して、そのほかの現地人との方針徹底を図るということが不可欠だと思います。
中国で日本の製造業を対象とした当社製品の紹介セミナをさせていただく際にも、当初と比較すると中国語のみでの講演が主流になりました。日本以外の外資系の工場へ行くと、すべて現地の方が決定権を持って工場を運用しており、本国とのコミュニケーションもITを利用して盛んに行われています。
このときの共通言語を英語としている点も日本以外の外資製造業の共通した特徴で、日本人と中国人のコミュニケーションもお互いに英語で取ることにより、意思疎通の齟齬(そご)を減少させる努力の跡が見られます。
次回ご紹介させていただくサンテックパワー(中国に本社を置く世界的な太陽電池製造の会社)におけるケースのように、海外の工場をM&Aすることにより急速に発展していく中で、メール文はすべて英語で統一したというような実例もあります。
A社 | B社 | C社 | D社 | E社 | F社 | |
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従業員数(日本人) | 10000(10) | 500(2) | 100(1) | 7000(5) | 250(3) | 2000(5) |
離職率 | 10%以上 | 10%以上 | 10%以下 | 10%以上 | 10%以下 | 10%以下 |
ジョブホップ対策 | 福利厚生 | インセンティブ | 現地化 | 教育制度充実 | 現地化 | 日本留学制度 |
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