ZigBeeの物理層であるIEEE802.15.4と技適を測定の観点から解説。第4回は2.4GHz帯ZigBeeのIEEE試験を紹介
第4回となる今回は、2.4GHz帯ZigBeeのIEEE試験について解説します。
まず参照する規格は、「IEEE802.15.4-2003」です。ここには2.4GHz帯だけではなく、868MHz(欧州向け)、915MHz帯(米国)の内容も含まれます(規格の位置付けや主要なパラメータなどは第1回で説明したとおりです)。
802.15.4-2003は、ZigBeeのベースとなる物理層についての規格ですが、この中の“PHY specification”という部分に、送信機および受信機として満たすべき要件が含まれています。
その中から、測定器を使用して評価する項目をご紹介します(先頭の番号は、規格書内の項目番号です)。
デバイスから出力されるZigBeeの変調信号を、スペアナや変調解析ツールで評価します。
こうしたツールを使って、デバイスから任意の周波数で最長パケット(ペイロードにはランダムデータを使用)を送信し、以下のテストを行っていきます。
このときデバイスを、指定したチャネル周波数で連続パケット送信状態にできる「テスト用の送信モード」にする必要があります。デバイスのコントロールは通常、PCに搭載された専用ツールなどを通じて制御されます。ツールはチップメーカーなどから提供されます。
対になる機器がないと動作できないようなデバイスを測定することは非常に困難です。測定対象となるデバイスの制御方法をあらかじめ確認しておいてください。
では、送信機試験の中身を見ていきましょう。
・6.5.3.1 Transmit power spectral density (PSD) mask
スペクトラムマスク試験は、無線の物理層評価では一般的な試験です。スペアナのリミットライン機能を使い、規格に沿って「マスク」と呼ばれるラインを作成しておきます。これをデバイスからの変調信号に適用し、スペクトラムがラインの中に収まっているかを確認する試験です。
規格で決められているマスクは2種類あります。1つは許容値が信号によらず絶対値で決められているマスク、もう1つは許容値が信号レベルからの相対値で決められているマスクです。
どちらも、送信チャネルの周波数を中心にして、左右に3.5MHzのところで許容値が決められています。2つのマスクに対してどちらもPASSする必要があります。
マスク試験には、掃引型のスペアナ、FFTアナライザともに使用することができます。
・6.7.3 Error-vector magnitude (EVM) definition
・6.7.4 Transmit center frequency tolerance
この2項目は、変調解析ツールを使用します。
ここでEVMについて簡単にご説明します。EVMとはError Vector Magnitudeの略で、送信機の変調精度を知るための重要なパラメータです。
第1回でご説明したIQ変調とコンスタレーションを思い出してください。
理想的なデジタル変調信号をシンボルタイミングでIQ平面上にマッピングすると、シンボルは理想点に集約されます。しかし、実際の信号にはノイズや干渉、回路のひずみが加わり、シンボル点はばらつきます。こうした実測信号と基準信号(理想信号)のずれから生じる「エラーベクトル」を検出し、基準信号ベクトルに対して大きさの比を取ったのが「EVM」です。エラーを引き起こす要因にはさまざまなものがあり、要因によってコンスタレーションの見え方が違います。
EVMはこれらの要因が含まれる信号を総合的に評価する指標になります。
変調解析ツールは、デバイスが出力したO-QPSK信号を復調し、EVMや周波数エラー、振幅エラー、位相エラーなどを表示します。IEEE802.15.4-2003では、EVMと搬送波の周波数エラー(Transmit center frequency tolerance)の許容範囲のみが規定されていますが、送信機の詳細なデバッグをするにはこれら以外の結果も非常に重要です。
変調解析ツールで表示される、そのほかのエラーやコンスタレーションの様子をEVMと併せて確認していくことで、送信機のどこにエラーの要因があるのかが見えてきます。
・6.1.5 Out-of-band spurious emission
・6.7.5 Transmit power
この2項目については、各国の規制に従うように書かれています。日本においては電波法の規制、つまり技適の「スプリアス発射および不要発射の強度」「空中線電力の偏差」に相当します。これらについては、次の第5回でご説明します。
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