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» 2010年04月23日 00時00分 公開

こうやればよかった! メカ設計者のためのPDM産業機械メーカーのPLM立ち上げ奮闘記(3/3 ページ)

[小林由美,@IT MONOist]
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生産管理と3次元モデル

 同社は、生産管理システムと3次元CADとの完全データ統合まで目指さないという。できるだけ仕組みをシンプルにしたいと考えたのがその大きな理由だ。

 「大規模なPDMも考えたこともありましたが、CADユーザーはPDMで、非CADユーザーは生産管理システムからデータが参照できれば、十分だと思いました」(土橋氏)。

 同社は装置の生産部門の作業指示書などを含む書類は、紙がメイン。過去は、三面図(投影図)や写真付きの作業指示書、部品表を見ながら作業を行うのが通常だった。特に三面図は、設計図を描かない人にとっては非常に分かりづらいもので、設計者の意図が正確に伝わりづらい。生産部門の現場で3次元CADのモデルを見ることもあったが、ロースペックなPCで無理やり3次元モデルを開いていた。これでは、データを見るのが億劫(おっくう)になってしまう。

 土橋氏は、ある日、県外の、あるメーカーの工場を見学する機会があり、そこでXVLを利用した3次元ビューアによる作業指示書を初めて見た。自社にも、ぜひこのような仕組みを入れたいと考えた。

 しかし、いきなりそのレベルを目指すのはさすがに無理だと思い、ひとまず生産部門で3次元ビューアを導入してもらい、3次元モデルをそれで見てもらうことにした。先の運用のことを考えてツールも選定したが、ひとまずは「3次元ビューアを使ってもらえれば、それでいい」。とにかく取掛かりを作り、そこから広げていくことが肝心だ。

生産部門の様子 左が旧式、右が新式

 土橋氏の目論見(もくろみ)どおり、3次元ビューアは誰かが強制をすることもなく、生産部門の人たちの身近に自然と広まっていった。その先のフェイズに進むには、もちろん課題はたくさんある。3次元ビューアのベンダにも機能のリクエストを積極的にしているとのことだ。

元メカ設計者・土橋氏が想像する3次元作業手順書の仕組み 例えば、左窓のアセンブリで指示した部品が、右窓に表示されるようにしてほしい

技術系男子の「英語プレゼン講座」

 記事の本題から外れてしまうが、「最近の設計現場もグローバル化しつつある」「PLMは、グローバル化の要」……ということで、土橋氏の英語プレゼンテーション(以下、「プレゼン」)の体験談を紹介する。今後、読者の皆さんが英語で、主に米国人とコミュニケーションする際、少しでもヒントになれば幸いだ。

 過去、台湾で営業もこなし、そこで英語も使っていた土橋氏。英語は話せるものの、英語によるプレゼンは今回が初めてだったとのこと。ネタ集めや資料作りは、これまでに日本で何回か講演してきた経験と資料の蓄積があったため、それほど困らなかったが、一番大変だったのは英訳作業とのこと。当然、通常の業務をやりながらの準備なので、自宅に持ち帰っての作業もだいぶあったという。

土橋氏が用意したシナリオ

 「今回の件では、あらためて『技術英語って難しい』と思いました。とはいえ、今回のような内容も、おそらくは中学卒業レベル、せいぜい高校で習うぐらいの単語でだいたいは説明できるはずなんです。問題は、言い回しですかね……」(土橋氏)。単語が出てこない、というよりは、自然な単語選びや表現をするのに苦心したという。

 「社内の海外営業担当者が、『Have』『Had』といった完了形を使わなくても、とにかく、シンプルな現在系や過去形で『達成したか、達成しなかったか』が伝わればいいんだよ、とアドバイスをくれたので、それにのっとってシナリオを考えてみました」(土橋氏)。

 日本のユーザー事例講演は、たいてい、まず会社紹介が来る。そして、問題提起がされ、それに対する検討・対策の経緯などの説明を経て、結論となるパターンが多い。米国のプレゼンテーションは、その真逆が主流。今回の土橋氏のプレゼンの最初でも、自分たちが取り組んだ活動を図式化した資料を提示した。ちなみに会社紹介は、ラスト。「日本だと、会社紹介を長々と行うプレゼンがよくありますが、もともとそれに疑問を感じていました。聴講者の目的は、あくまで事例であり、会社紹介ではないのでしょうし。ただ、プレゼンのミッションとしては『企業価値を高める』ということも重要な要素ですから、紹介したプロジェクトを絡めた会社紹介をラストで行いました」(土橋氏)。米国人とのコミュニケーションでは、「結果を先出しにして表現すること」を強く意識したい。

 それから、関係者の意見も含め、聴講者の興味を引いていたと感じられたのが、ファイルフォーマットのXVLについての説明。「今回のプレゼンは、XVLの仕組みについて説明しています。こういうの、日本ではやらないんですが……」(土橋氏)。

アスリートFA 設計部 3DCAD推進G 課長 土橋 美博氏

 日本の講演なら、特に説明なしで、XVLの単語を出しておけば、それは「3次元ビューアによく使われる拡張子」「3次元モデルのデータが圧縮される」と、個々が察してくれるような場合が多いと土橋氏はいう。しかし米国の講演では、ロジカルにその仕組みを説明しておこうと考えたという。「今回の反応を見ても、米国人は技術の仕組みに対して関心が強いのかもしれないと思いました」(土橋氏)。

 ただ、このような仕組みの説明は、日本語でやろうとしても淡々としてしまう。そのうえ日本人のしゃべる英語では、さらに淡々としてしまう。しゃべり方のメリハリの付け方にも苦労したとのことだ。

 「今回の件は、『英語でもプレゼンができた!』と、自信になりました」と、土橋氏。挑戦の結果としては、現状のベストは尽くしたものの、いろいろと課題は残ったとのこと。また同じような英語プレゼンの機会があれば、リベンジしたいという。

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