「内燃機関の燃費向上に注力」――ボッシュが技術戦略を表明

» 2010年04月01日 00時00分 公開
[Automotive Electronics]

 ボッシュは2010年2月、都内で記者会見を開き、同社の中核事業の1つであるパワートレインについて、内燃機関の燃費を向上するための技術開発に注力する方針を明らかにした。

 ボッシュの専務取締役を務める押澤秀和氏(写真1)は、「世界規模の自動車の年間生産台数(車重6トン以下)は、年率5〜6%で増加すると予測されている。その中で、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)など、電動システムを搭載する自動車の市場規模は、2020年に全体の10%を占める程度と当社は予測している。今後20年以上の間は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関が優勢だろう。ただし、これらの内燃機関も、直噴技術や代替燃料への対応など新しい技術を採用することで、現在よりも燃費を25〜30%向上させなくてはならない。ボッシュは、そのための技術開発に注力している」と語る。

写真1ボッシュの押澤秀和氏 写真1 ボッシュの押澤秀和氏

 会見では、現行の一般的なガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車のCO2排出量を、同社の技術を適用することによって、どこまで削減できるかについて説明した。

 現行のガソリンエンジン車としては、排気量2.0リットル(l)/トルク200Nmのガソリンエンジンを搭載する車両を想定した。この車両のCO2排出量は182g/kmである。これに対して、まず、直噴技術、エンジンの小型化、アイドリングストップ、廃熱制御技術、ターボ(過給機)を適用することで、エンジンの排気量を1.4lに減らしながらも、トルクを210Nmに向上できる。CO2排出量は142g/kmとなる。さらに、エンジンの気筒数を4本から3本に減らし、可変バルブリフト機構を採用することで、排気量は1.1lまで減り、トルクは当初の200Nmを維持できる。CO2排出量は130g/kmとなる。最後に、容量1kWhの2次電池と出力25kWのモーターを導入してハイブリッド化することで、モーターを含めた総トルクは340Nmまで向上する。そして、CO2排出量は112g/kmまで削減される。

 一方、現行のディーゼルエンジン車としては、コモンレールシステムとターボを用いた排気量2.0l/トルク340Nmのディーゼルエンジンを搭載する車両を想定した。CO2排出量は144g/kmである。これに、燃料燃焼の最適化、エンジンの小型化、アイドリングストップ、廃熱制御技術を適用することで、トルクは340Nmを維持しながら、排気量を1.6lに減らすことができる。CO2排出量は112g/kmである。次に、ディーゼルエンジンの課題である窒素酸化物(NOx)について、その排出を低減する還元触媒システムを導入する。このことにより、同じエンジンでもCO2排出量を105g/kmまで下げられる。さらに、エンジンの気筒数を4本から3本に減らすことで、エンジンの排気量は1.2lになる。この場合、トルクは290Nmに減るのだが、CO2排出量は97g/kmとなる。最後に、ガソリンエンジンと同様に、容量1kWhの2次電池と出力25kWのモーターを導入してハイブリッド化を行う。総トルクは430Nmとなり、CO2排出量は86g/kmまで削減される。

 押澤氏は、「欧州では、2012年から、130g/km以下というCO2排出量規制が適用される。この規制に対応するには、こういった内燃機関の燃費向上技術を活用する必要がある」と、その重要性を強調する。

 なお、これらの取り組みにおいて、最後にハイブリッド化することを想定しているように、同社でも、電動システムの開発に注力している。すでに、2010年に発売されるドイツPorsche社の「Cayenn」とドイツVolkswagen社の「Touareg」のHEVモデルや、フランスPSA Peugeot Citroen社が2011年に発売するディーゼルHEVの電動システムの開発を担当しているという。

(朴 尚洙)

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