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» 2010年01月18日 00時00分 公開

夢と苦労を詰め込んだGXRの設計(上)隣のメカ設計事情レポート(4)(2/3 ページ)

[小林由美,@IT MONOist]

「分けたい」といっても、簡単じゃない

 さて、まずは「システム的に、2つのユニットをどこで切り分けるのがベストか」。

 設計では、もちろん真っ先にそこを議論することになった。しかもこの議論が大方収束するまで、半年を要したという。

 「この問題は、システムや電気、機構、ソフト、あらゆる分野が絡むため、さんざんもめました。しかもこの切り方次第で、構成部品のボリュームは大きく変わってきますから」(篠原氏)。

 撮像素子(CCD)をレンズ側に置くことは、比較的早い段階で決定したという。その後、大きな山となったのは、画像処理エンジンの構成検討だった。画像処理エンジンをカメラのどこに持たせるか。本体側? レンズ側? ……それとも両方?

 「最初は、レンズ側のユニットにCCDを付けておいて、CCDの配線だけが本体側にあって、2つのユニットはフレキやコネクタでつないでおけばいいか、と単純に考えました。ただ、エレキ担当者にいわせると、『そんなの冗談じゃない』……となる。それではそもそもデータ転送ができない可能性があるし、個々のレンズに関連するある程度の画像処理はレンズ側でやっておくべきでは? ……という具合に次々と問題が出てきました」(篠原氏)。

 レンズのユニットの撮像素子でとらえたアナログデータをいったんデジタル信号に変換しておかなければ、もし両ユニットの接触が不安定になった場合、画像劣化につながる恐れも想定できた。よってレンズ側にもある程度の画像処理エンジンが必要だという話へ。

 一方で、本体側はLCDやSDカードコネクタを有するので、レンズ側のユニットがなくても再生動作ができることが必須。となると本体側にも画像処理機能が必要……。

 よって画像処理エンジンは、本体のユニット、レンズのユニット両方に必要。「やり過ぎでは」という意見もあがりつつも、結局はそれが最適であるという結論に落ち着くこととなった。すなわちそれは、電装基板が最低1枚余計に増えたことも意味した。

 撮像素子や画像処理エンジンまで実装したこのレンズのユニットは、もはや単なるレンズとはいえなくなってしまった。以降では、このユニットを「カメラユニット」と呼ぶ。また装着先の本体を「本体ユニット」と呼ぶ。

電池、探し直し!

 画像処理エンジンを2つ実装することにした。しかも、「カメラユニットで画像と撮り、その画像データをカメラ本体側でカードに書き込み……」という具合に、2つのエンジンが同時に作業することもある。つまり、消費電力がこれまでやってきた製品と比べ、格段と大きくなってしまう。そのうえ同製品では、想定するユーザーはこれまでの製品よりもハイレベルなユーザーも含んでいる。彼らを満足させるための高機能を実現するため、ハードウェアの動作も高度になるだろうから、さらに消費電力はかさむ方向へ。

 フル充電後の撮影枚数など、企画担当の想定しているスペックを考えると、GXやGRの電池をそのまま使用することは厳しかった。そのような大きな容量をまかなえる電池というのは、当然それなりにサイズが大きくなる。ここでまたもや、筐体サイズを圧迫する要因が1つ、というわけだ。

 回路設計者が解析した想定消費電力と、企画担当の求めるスペックを基に、電池容量を決定した後は、新たな電池の候補探し。「複数の電池メーカーさんにそれぞれ何度も相談しました。10種類ぐらいの電池の候補を出し、コストや大きさを比較しながら、一番適切なものを選定しました」(篠原氏) 。

左がGR DIGITALの電池、右がGXRの電池

いまから、そこまで考えておく

 もし将来、「こんな機能を付けたい」というリクエストが出たとき、いま自分が考えた部品がネックになり、実現できなかったとしたら? そこで、システム拡張のバリエーションが1つ減ることになる。「われわれの検討結果が、GXRの未来に、確実に響いてしまう!」――GXRの設計を通して、「製品の発展性」というテーマは篠原氏たちに、常に付きまとい、大いに悩ませることになる。

 「設計のはしばしで、『いまのこのレンズとこのレンズなら、これでいいよね?』『いや、待て!』という問答をしょっちゅう繰り返していました。GXRは先々で、いったいどう進化していくか? いつも企画担当と侃侃諤諤(かんかんがくがく)と議論していましたが、お客さまの要望を100パーセント予想するのは到底不可能でした。設計の中でそのあたり、どうしても『こうなった時は?』『こういう使い方をするとしたら?』という具合に煩雑になりがちでしたね」(篠原氏)。

 上記ではシステム(部品構成)的な切り分けがメインだったが、発展性という面で、筐体形状そのものの切り分けも問題になった。

本体ユニットの3方向を開放したい

 同社のデザイン担当が作ったキックオフ時の案を見ると、いまと明らかに違う点が1つある。

 本体ユニットで、カメラユニットがはまる個所の下方(底)の形状だ。以下のデザイン案サンプルでは、筐体下方に壁がある。

初期のデザイン案の下(底)側に壁

 「この方が一見、着脱が楽そうに見えませんか? 入れた状態でも、安心感がありますよね」(篠原氏)。確かにこの形状なら、取り扱いや筐体剛性の面で安心感がある。しかし、ここで出たのが、発展性の問題だった。

 「本体ユニットの下をふさいでしまうことで、先々、行き詰まる可能性がありそうだと考え、設計の中途でこの個所を空けることになりました」(篠原氏)。例えばユーザーの要望で新しいカメラユニットを考案するとき、その下壁の分、ユニットの筐体サイズが制限される、すなわち機能も制限されてしまう。

カメラユニットを外した状態

 発展性は譲れない要素として、筐体の剛性やユーザーの安心感を少しでも高めていくように、強度の評価を繰り返しながら設計するしかなかった。

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