本格化するEV/PHEV開発(1/4 ページ)

国内自動車メーカーによる電気自動車/プラグインハイブリッド車の量産に向けた取り組みが本格化している。すでに、三菱自動車と富士重工業は電気自動車の量産を開始しており、2009年末からはトヨタ自動車がプラグインハイブリッド車を、2010年秋には日産自動車が電気自動車の量産を開始する予定である。本稿では、まず『第41回東京モーターショー』に出展された電気自動車、プラグインハイブリッド車、各自動車メーカーの開発姿勢についてまとめる。その上で、電気自動車開発に向けた半導体メーカーと開発ツールベンダーの取り組みを紹介する。

» 2010年01月01日 00時00分 公開
[本誌編集部 取材班,Automotive Electronics]

“究極のエコカー”の実現に向けて開発が加速

 2009年の国内自動車市場を席巻したのが、トヨタ自動車の新型「プリウス」と本田技研工業の「インサイト」に代表されるハイブリッド車である。ハイブリッド車は、モーター、インバータ、2次電池で構成される電動システムを利用することにより、燃費が大幅に向上することを最大の特徴としている。


表1第41回東京モーターショーに出展されたEV/PHEV 表1 第41回東京モーターショーに出展されたEV/PHEV 

 しかし、ハイブリッド車は走行中にエンジンを使用するので、燃料の消費やCO2の排出をゼロにできるわけではない。これに対して、家庭用電源などから2次電池に充電した電力だけで一定の距離を走行できる電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)は、“究極のエコカー”と言われている。2009年10月24日〜11月14日に幕張メッセで開催された第41回東京モーターショーにおいて、最も注目を集めたのがこれらEV/PHEVに関する展示である(表1)。

EVのラインアップを各社拡充

 現在、EVの開発に最も注力している自動車メーカーの1つが日産自動車である。同社は2009年8月、専用プラットフォームをベースに開発を進めているEV「リーフ」を2010年秋に発売すると発表している。今展示会では、EV開発へのさらなる注力方針を鮮明にし、リーフに次いでEVを3車種投入する計画を明らかにした。3車種とは、「NV200バネット」をベースとする小型電気商用車、米国市場における高級車ブランド「INFINITI」の小型車、そして、コンセプトカーとして出展された「ランドグライダー」のような2人乗りのEVである。

写真1「ランドグライダー」のステアリング 写真1 「ランドグライダー」のステアリング 
写真2「ConceptPX-MiEV」のシステムイメージ 写真2 「ConceptPX-MiEV」のシステムイメージ 

 ランドグライダーは、車幅が1100mmで、前部の運転席と後部座席にそれぞれ1人ずつ乗るように設計されている。搭載するリチウムイオン電池の容量はリーフの1/4程度だが、走行距離は100kmを確保している。走行距離が160kmのリーフに比べると、効率は2.5倍程度まで高められていることになる。この走行距離は「車体の空気抵抗と車重を減らしたことにより実現できた」(日産自動車)という。また、飛行機の操縦桿のようなステアリングにより運転を行う(写真1)。この運転システムには、機械力を利用せず電子制御だけでステアリング操作を行う「ステアリングバイワイヤー」が採用されている。

 2009年7月からEV「i-MiEV」の量産を開始している三菱自動車は、EVのラインアップ拡大に加えて、PHEVの開発も計画している。「Concept PX-MiEV」は、4輪駆動の大型SUV(スポーツ多目的車)に、開発中のプラグインハイブリッドシステムを組み込んだコンセプトカーである。排気量1.6l(リットル)のエンジンに加えて、走行用として前部と後部に出力60kWのモーターを搭載しており、さらに発電用として前部に出力70kWのモーターも備える(写真2)。システムの動作は、大まかには3種類に分けられる。1つ目は、発進時や低/中速走行時にモーターだけで走行する「EVモード」である。2つ目は、2次電池の残量が少なくなった場合に、エンジンと発電機を使って電池に充電しながらモーターで走行する「シリーズハイブリッドモード」。3つ目は、高速走行する場合に、エンジンとモーター、両方の動力を用いて走行する「パラレルハイブリッドモード」となっている。

 これら3つのモードでは、基本的に前部のモーターを用いて走行する。さらに、4輪駆動車のコンセプトカーであるConcept PX-MiEVでは、各走行モードにおいて、前部と後部のモーターを両方用いて走行安定性を高められるようにしている。2次電池はリチウムイオン電池で、その容量はi-MiEVと同程度としている。ただし、車体が大きく、モーターの出力が高いこともあって、電池の電力のみを使用する場合の走行距離(以下、EV走行距離)はi-MiEVの1/3以下となる50kmとなっている。三菱自動車は、Concept PX-MiEVのシステムを搭載したPHEVを2013年までに発売する予定である。

 さらに、EVのラインアップ拡大の一例として、i-MiEVベースの小型商用車「i-MiEV CARGO」も公開した。

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