S&OPは、すでに説明したように1988年に提唱され、ビジネスのグローバル化やITの進化によって発展してきたマネジメント・コンセプトです。S&OPの定義については、その論者やS&OPの概念の発展段階によって、いくつかのパターンがありますが、私はS&OPを次のように定義しています。
「S&OPとは、トップマネジメントと機能部門のミドルマネジメントが参画し、製品/サービスの需要と供給を継続的にバランスさせる戦術レベルの情報共有と意思決定プロセスである」
そして、技術的には、
S&OPプロセスは、製品/サービスの需給にかかわるバリューチェーンの機能組織の代表が参加する一連のクロス・ファンクショナルな情報共有と意思決定の「プロセス」です。製販調整会議のような「会議体」や、単一の活動ではありません。
筆者は、S&OPプロセスを一連の月次の情報共有と意思決定のサブプロセスから構成される「5ステップモデル」として定義しています。
ここでは、5ステップについて簡単に紹介しましょう。
ステップ | 内容 |
---|---|
【ステップ0】データ収集 | このステップでは、ERPをはじめとするITシステムの情報を活用して情報収集を行います。 |
【ステップ1】新規アクティビティ・マネジメント | このステップでは、中長期をにらんだ新製品の導入や新工場の建設などのプロジェクト・マネジメントが含まれます。 |
【ステップ2】需要マネジメント | このステップでは、統計的需要予測やCRM(顧客関係性管理)などが含まれます。 |
【ステップ3】供給マネジメント | このステップでは、MPS(マスター・スケジュール)やMRP(資材所要量計画)などが含まれます。 |
【ステップ4】統合された調整活動 | このステップでは、予算など財務との連携が含まれます。 |
【ステップ5】エグゼクティブ・ビジネス・レビュー | このステップでは、責任者としてのトップマネジメントの最終意思決定を行います。 |
表2 S&OPの5つのステップ |
◇ ◇ ◇
本稿ではごく概要のみを紹介しました。本稿で紹介した内容を基に、機会を改めて、より具体的なS&OPの手法について紹介していきます。ご期待ください。
S&OPが1988年に提唱されてから20年余りが経過しますが、ここ5年間程、グローバル化の進展などから、英語圏ではS&OP関連書籍が増えてきています。日本語でS&OPを包括的に取りまとめた書籍としては、拙著『S&OP入門 グローバル競争に勝ち抜くための7つのパワー』日刊工業新聞社、2009年6月があります。
松原 恭司郎
キュー・エム・コンサルティング有限会社 取締役社長
公認会計士/情報処理システム監査技術者
現在、中央大学専門職大学院(国際会計研究科)特任教授、東北福祉大学(総合マネジメント学部)兼任講師、BSCフォーラム会長、ERP究推進フォーラムアドバイザーなどを務める。
国際会計事務所系コンサルティング会社などを経て1992年より現職。バランス・スコアカードを活用した戦略マネジメントと業績管理、ERP、S&OP関連のコンサルティング業務に従事。
S&OP/ERP/MRP?関連の著訳書に、『S&OP入門』、『図解ERPの導入』、『キーワードでわかるSCM・ERP事典』(編著)、オリバー・ワイト著『MRP?は経営に役立つか』(訳)、アンドレ・マーチン著『実務DRP』(訳)日刊工業新聞社などがある。またBSC関連の著訳書に、『バランス・スコアカード経営』’00日刊工業新聞社、ニーブン著『ステップ・バイ・ステップ バランス・スコアカード経営』(訳)’04、『バランス・スコアカード経営実践マニュアル』(共編著)’04、『税理士の戦略マップ』(共編著)’07中央経済社などがある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.