世界のバリューチェーンから日本がはじかれる!? S&OPに対応すべきこれだけの理由経営と基幹業務の現場をつなぐS&OP(3/4 ページ)

» 2009年10月19日 00時00分 公開

課題チェックリストで導入効果を診断する

 ここで、「バリューチェーン上の課題チェックリスト」を使って自己診断してみましょう。

 各項目は、課題とそれに対して要求されている要素が示されています。市場のスピード化を前に、多くの読者の皆さんが直面している課題がほとんどではないでしょうか。

 皆さんが所属する組織で、このチェックリストに掲げた7項目課題のうち、いくつかが該当するのなら、S&OPについて学んでみる価値は十分にあるといえるでしょう。

チェックポイント1

【課題】日本、米州や欧州の市場に対して中国や東南アジアで製造した製品を輸出するなどのグローバル化によって、調達、生産、物流、販売などのバリューチェーンの機能が分断されてしまっている。


=グローバルに分断したバリューチェーンをシームレスにつなぐグローバル調整力が求められている。


チェックポイント2

【課題】ビジネスのグローバル化やデジタル化、それに伴う製品ライフサイクルの短期化など企業を取り巻く変化のスピードが増しており、従来のように中期経営計画や事業計画を四半期ごとにレビューしたり、ましてや年次にローリングしていたのでは、まったく追いつかなくなってきている。


=環境対応型の戦略計画と業務計画をつなぐ俊敏力が求められている。


チェックポイント3

【課題】基幹業務を取り巻く環境の変化のスピードが高まり、バリューチェーンをタイムリーかつ効果的にマネジメントし、戦略と業務をつなぐ必要が生じている。


=戦略と基幹業務(現場)をつなぐ戦略実行力が求められている。


チェックポイント4

【課題】昨今の世界的な景気の変化を受けて、幾度となく業績予想の修正を余儀なくされており、年次予算の編成に多大な労力を割いているが、硬直的であり、変化の激しい経営環境の下では機能していない。


=最新の経営環境に基づきトップマネジメントが意思決定をした「売上高、コスト、粗利、在庫」のローリング予算、もしくは財務数値を月次に入手する財務評価力が求められている。


チェックポイント5

【課題】需要と供給を扱う機能別組織間の責任のなすり付け合いがよく発生している。


=情報共有とコミュニケーションの円滑化により、全体最適を志向する各機能間をつなぐクロス・ファンクショナル力が求められている。


チェックポイント6

【課題】国内では、2012年問題とも称される団塊の世代の一斉退職により、ナレッジが一挙に失われるリスクを抱えており、一方でグローバル化により海外の販売拠点や生産拠点の異なる人種、さまざまな言語、文化を持った人材が円滑にコミュニケーションを取ることのできるマネジメントプロセスを構築する必要性が高まっている。


=機能部署担当のミドルマネジメントとグローバル組織をつなぐ組織学習力が求められている。


チェックポイント7

【課題】ERPパッケージは導入したものの、財務アプリケーションへの偏重と統合利用の遅れによって本来のERPの統合のメリットを享受できておらず、また多大なカスタマイズによるコスト増など、巨額なERP投資から経営上の効果を引き出せないでいる。


=ERPシステムの全体導入を加速し、ITアプリケーションとデータをつなぐIT活用力が求められている。



バリューチェーン上の7つの課題への処方せんとなるのがS&OP

 S&OPの導入により期待される効果は、大きく分けて、顧客サービスの向上や在庫の削減といった計数化が可能な「ハード・ベネフィット」と、ミドルマネジメントのスキル向上やチームワークの高揚など定性的で、測定することが難しい「ソフト・ベネフィット」に分けることができます。

 前述した顧客サービスの向上や在庫の削減といったハード・ベネフィットの追求は、TQM、JIT、カイゼンといった日本企業が得意とするソリューションをはじめとして、多くのイニシアティブの相乗効果によって生まれる結果指標です。

 そこで、ハード・ベネフィットもさることながら、グローバル化や経営環境の変化に直面している多くの日本企業にとっては、S&OPによってもたらされるソフト・ベネフィットが、大いに注目に値するといえるでしょう。

 参考までに、S&OPによりもたらされるソフト・ベネフィットを「S&OPの7つのパワー」として、図1にまとめておきます。

図1 S&OPの「7つのパワー」 図1 S&OPの「7つのパワー」

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