今回は、周波数応答特性について。猫が目の前を飛び交うピンポン球をキョロキョロ追いかける様子になぞらえて説明する
銀二(ぎんじ)
設計コンサルタント。甥(おい)っ子の草太を自分の息子のようにかわいがっています。
草太(そうた)
銀二の甥。現在は大学院生です。ちょっと困るとすぐ叔父を頼ってしまうちゃっかり者だけど、頑張り屋さんです。
編集部注* 本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
前回は自動制御における3大特性が、安定性、静特性、動特性であることを確認しましたね。今回から3大特性の中身について具体的に学習していきます。まずフィードバック制御システムで最も重要なテーマであるシステムの安定性について、今回と次回の2回に分けて考えてみましょう。
システムが不安定であるという場合、具体的にどういう状態をイメージするかね?
そうだな。バタバタしている状態かな?
なんじゃそりゃ。慌てふためいている状態か?
そんな感じ
もうちょっと、工学的に説明できんの?
飛行機でダッチロールってあるよね。真っすぐ飛ばずに、機体が揺れながら飛ぶやつ。あんな感じ。それから洗濯機が、揺れて音をたてながら回転するのも不安定運動だよね
要は状態が時間とともに大きく変化していく状態が不安定っちゅうことやな。厳密にいうと、振動しながら運動していても、その振動が時間とともに大きくならなければある意味安定といえる。しかし実際にはダッチロールも、洗濯機のガタガタ運転も好ましい運動じゃないから不安定な運動の部類に入るわな。それから、テーブルのうえに立てた卵も不安定だよな。ちょっとの振動で倒れてしまうからな
安定イコール「外乱があってもどっと構えていて動じない」。不安定イコール「外乱があると、慌てふためいて自滅する」ってイメージだね
しょうゆ〜こと
叔父さん。ギャグの著作権侵害で訴えられんでぇ〜
冗談は置いておいて、この安定性あるいは不安定性を定量的に表現するにはどうしたらいいと思う?
うーん……
例えば、車の運転の場合で考えてみようか。車の運転もフィードバックシステムだよな?
道路の中央の位置を目標値とすれば、車を目標位置である道路中央にいつもあるように運転するんだからそうだよね(図1)
車は結構速いスピードで走っているとしよう。そして、ずーっと右カーブが続くと思ってハンドルを右に切っていたら、突然目の前に、左カーブが迫って来た(図2)。そのときお前はどうする?
当然左にハンドルを切るよ
もし、わき見運転しているときに左カーブに遭遇したら?
ハンドルを切るのが間に合わなくて、コースの右側に外れてしまうかな
そうだよな。じゃあ、もし、慌てていて、しかもハンドルにまったく遊びがなかった場合どうなると思う?
おもいきりハンドルを切るだろうな。切りすぎて、今度はコース左側に飛び出すかもね
つまり過剰な反応をして、切り過ぎてしまうってことだよな。どんなにくねくね曲がったコ−スでも、道のまん中で車を走らせることができるのが安定した運転で、ちょっとでもコースが変化すると道から外れてしまうような運転が“不安定な運転”と呼ぶことにすれば、不安定な運転となる原因はなんだと思う?
いまの話から、コースが急に変化したときに慌てて過剰にハンドルを切るとか、カーブが近づいていることに気付くのが遅れるとかってことになるかな
そうだ。慌てん坊とか、のんびり屋といった運転手の性格だけでなく、車のパワステの特性や、タイヤの特性も関係しているだろうけど……。システムが不安定となる原因は情報や反応の遅れと変化に対する過剰反応の2つの要因があることが分かるやろ?
確かにそうだけど、これのどこが定量的なん?
まてまて、急ぐでない。このことを定量的に表現するのが『周波数応答特性』だよ
で、出たっ! ワオッ! ……閉店ガラガラ……
おい、おい。お前こそ、誰かのギャグをパクッてるやないか〜い
もーいいから先へ進も
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