2012年をめどとした白熱電球廃止の動きが活性化している。いま一度、白熱電球、蛍光灯、そして次世代照明といわれるLED照明の仕組みを知ろう
これまでの話
理系男子ムサシくんは、ここ最近の照明事情に胸を躍らせていました。
――低炭素化社会へ向けた地球規模での取り組みが活性化している中、照明分野においても、従来より使用されてきた白熱電球を2012年をめどに廃止するなどの動きが見られています。
乙女ちゃん、知ってる? 照明の歴史をさかのぼると、これまでおよそ60年に一度のサイクルで新しい照明技術が誕生してきたんだ。1810年代にガス灯、1879年に白熱灯、1938年に蛍光灯。そして次にくるといわれているのがLED(発光ダイオード)照明。研究自体は1990年代初頭から開始されていて、ここ最近やっと一般家庭用に販売が開始されたんだよ。
ふーん、じゃあそのLED照明が一番すごいの?
そうともいえない。それぞれ寿命や輝度が違うからね。
同じ照明なのにどうして違いが出るの?教えて!
白熱電球と呼ばれる、いわゆる一般的な電球は、図1のように電気を通すフィラメント、電球を覆うバルブ(ガラス管)、口金(ソケット)により構成されています。
フィラメントは電気が流れることで2000度近い温度まで発熱し、同時にやや赤みを帯びた白色光を発生(白熱化)します。これが電球の発光原理です。
バルブはフィラメントを保護するとともに、フィラメントの酸化(燃焼)や蒸発を抑えています。また、できるだけ寿命を保つために、不活性ガス(アルゴンと窒素の混合ガス)が封入されています。クリプトン電球などの名前は、この封入されているガスの名称に由来しています。
電球と器具の差込部分に当たる口金は、その幅ごとにE-26などの名称が付いていますが、これは国際的な基準(幅サイズ)に基づくものです。ただしE-17については、日本のみのサイズで、シャンデリアやダウンライト、浴室の照明など、多くの場所で使用されています。
主な特徴は小型・軽量で、集光・散光・調光が可能なこと。あたたかみのある光色で、効率の良いスポットライトなどの局所照明としても使用できます。
ただし、エネルギーのほとんどが熱として放出され、効率という面で考えると非常に悪いことから、省エネ効果が見込まれない照明として、各照明器具メーカーは白熱電球の製造中止を発表しています。
放電灯の一種である蛍光灯は、ガラス管の中に放電しやすくするためのアルゴンガスと、ごくわずかな水銀が封入されており、内壁に蛍光体が塗布されています。管の両端にはタングステンで作成された二重コイルのフィラメントが取り付けられた電極があり、コイルにはエミッタ(電子放出物質)が塗布されています。
発光原理は、まず蛍光灯内の電極に電気を流すことで発熱します。電極は白熱化させるものではなく、電子を放出する物質が塗布されていて、そこから、電子を飛ばすために電圧をかけています。
電子が出てくると、蛍光管の中にある水銀原子とぶつかり、紫外線を放出します。紫外線は人の目には見えないため、見える光の波長に紫外線を変えるために蛍光体を塗っています。紫外線はその蛍光体に当たると、可視光(人が見ることのできる光)に変わります。
なお、蛍光灯は白熱電球のようにフィラメントの酸化が激しくないため、白熱電球より長寿命となっています。また白熱電球のように、発熱させて光を得ているわけではなく、電子と原子を衝突させて光を放出しているため、無駄が少なくなっています。蛍光灯の寿命は短いもので6000時間。長いものだと、1万6000時間となっています。
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