では、ここで千葉・舞浜にあるエコーセンター(住金物産の100%子会社)で実際に行われたICタグ出荷検品デモンストレーションの模様を紹介する。
物流センターでは、通常、商品が到着してから「入荷」→「検数、検品」→「検針」→「店舗配分」→「バーコードによる出荷検品」→「(各店舗へ)出荷」という作業が行われ、日別出荷量1〜2万枚(時期などに依存)という膨大な量を18〜19時の出荷時刻に間に合わせなくてはならない(出荷指示締め切りが当日16時)。
しかし、現実にはこれだけの量を入荷〜出荷まで遅延なくすべて行うことは不可能で、本来、出荷精度の向上や店頭での入荷検品業務の効率化のために実施すべき「バーコードによる出荷検品」を断念していたという。
通常、バーコードによる出荷検品を行う場合、店舗配分が行われた製品の値札部分を1つ1つスキャナで読み取る必要がある。中には値札が表に出ていないものもあるため、いちいち袋を開けて値札を表に出さなければならない……。
さらに、こうした検品作業の負荷は倉庫側だけでなく店舗側にもある。接客優先の店舗では、時間のかかる検品作業をつい後回しにしてしまい、朝届いた商品を店頭に並べるのが夕方になってしまったり、検品作業を閉店後に行ってしまい販売機会を1日ロスしてしまったりするなどの問題(機会損失)が起きているという。
今回のデモンストレーションは、バーコードによる出荷検品の代わりに、店舗配分後に「ICタグ一体型値札発行」と「値札の付け替え」を行い、RFIDリーダライタにより「ICタグ出荷検品」を行うというものだ。
エコーセンター倉庫管理システムで出荷先ごとにどの商品をどれだけ出荷するのかをまとめたリストを印刷し、今回の実験店舗(2店舗)に対して作業担当者が専用のソフトウェアでICタグ一体型値札の印刷を行う。システム側の流れは、(1)値札発行業者から定期的に送信される印字項目データ(通常の値札で使用したもの)をRFID Anywhereが受信。(2)(1)で受信したデータをRFID AnywhereがICタグ発行システム用のデータ形式に変換(ICタグ値札発行システムはこのデータを基に印刷を行う)。(3)ICタグ発行システムは、ICタグ一体型値札に書き込んだIDをRFID Anywhere側に送信。RFID AnywhereがRFIDデータベースにRFID商品情報として登録する。
以下は、ICタグ一体型値札発行システムで用いられたICタグプリンタだ。
商品に付いている通常の値札を外して、先ほど発行したICタグ一体型値札に付け替える。RFIDシステムの実用化が進めば、縫製拠点側であらかじめICタグ一体型値札を商品に付けてから物流センターへ出荷するという。
(1)倉庫管理システムから送信された実験店舗(2店舗)分の納品書データをRFID Anywhereが受信。(2)作業者がタッチパネル式のICタグ出荷検品システムで出荷日と出荷先を選択し、ダンボールに張り付けるICタグ入りラベルを発行。作業者はRFIDリーダライタ、アンテナが設置された作業台の上でスキャンを行う。スキャン自体はバーコードの読み取りのように1点ずつ行うわけではなく、作業台の上を通過させるだけで手に持っている複数の商品を一度で認識してくれる。「作業者の手の大きさや体格にもよるが、平均して一度に5枚程度スキャンできる」と境氏。万一、納品予定のない商品がスキャンされた場合は、ICタグ出荷検品システムの画面上に警告が表示される。
ダンボールがいっぱいになったらICタグ出荷検品システムの[次箱]ボタンを押す。すると、スキャン済みの梱包された商品の一覧が記載された伝票が出力される(このタイミングで次のダンボール用のICタグ入りラベルが印刷される)。出荷が完了したデータはRFID Anywhereにより、店舗管理システム側が要求するXML形式に整形され、夜間自動的に送信される。そして、店舗側では受信したデータを基に、ICタグによる入荷検品が行われる。
以上、平成20年度の経済産業省委託事業「IT投資効率性向上のための共通基盤開発プロジェクト」の繊維分野における電子タグ実証実験の概要と、物流センター内でのRFIDによる出荷検品業務の効率化に関するデモンストレーションの模様をお伝えした。
現状、ICタグ自体のコスト(注)や、RFIDシステム自体の導入コストなどの課題はあるものの、今回の説明会ならびにデモンストレーションを通じて、倉庫・店舗内の業務効率化や取得情報の活用など、アパレル分野におけるRFID活用の可能性を大いに感じることができた。RFID推進小委員会では、2010年度以降、より大規模な運用実証、業界を横断した運用、業界以外との共同運用を進めていくという。引き続き、アパレル業界を含めたRFIDシステムの動向に注目していきたい。
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