台車が直線スロープを降り、ストッパと衝突したときにきちんと転んでほしい。 さあ錘(おもり)の重量はどれくらいにしよう?
いよいよ台車の設計に入ります。サブ・システム2のゲートを通過したボールが、台車を繋留していたロック機構を解除した後、台車は直線スロープ2を一気に滑り落ちます。台車はストッパと衝突して回転し、台車の中のボールが落下します。
草太「今度はロック機構の設計だね。設計条件はなんだろうね」
銀二「ゲートを通過したボールが確実にロック機構を解除しなければ駄目だ。そのためにはゲートを通過したボールの軌跡を把握しておく必要がある」
草太「僕がやった実験では、ベニヤ板のゲートなら、ボールはきれいにゲートを通過していたけどなぁ」
図のようなピタゴラスイッチを設計・製作し、設計計算書と試作品を提出せよ。
A地点から出発したボールは曲線スロープを経てB地点に到達し、直線スロープ1の終端のゲートを通過した後、直線スロープ2に繋留(けいりゅう)している台車のロックを解除する。
繋留が解除された台車は直線スロープ2を降り、ストッパによって横転し、台車の中のボールがシーソーに落下して、反対側のバスケットボールを跳ね上げ、バスケットの中に入るものとする。
なお、曲線スロープの出発地点Aの高さHとスロープの底の高さHb、曲線スロープの長さLは図示した値とし、また、B地点を通過するときのボールは極力遅くなるように設計すること。
銀二「草太がやったのは、直線スロープ1の始点Bから速度0で落下させたときの場合だろ? 実際には、曲線スロープから登ってくるボールは、曲線スロープの終点=直線スロープ1の始点=Bで速度が0とは限らないから、ゲート衝突するときはもっと勢いがある。前回の検討では最速837mm/sでBを通過する可能性がある。その場合には、草太がやった実験のような軌跡となるとは限らんよ」
草太「サブ・システム1の曲線スロープはもう作ってあるから、サブ・システム2につないで、実際にやってみれば分かるんじゃないの?」
銀二「それでは、設計にならんだろう。設計は本来机上で行うものだ。そうはいってもすべてが机上で設計できるはずもないから、不明な部分については実験データを使って設計することもある。最初から実験に頼っていると、いつまでたっても実験しなけりゃ設計できない、ってことになる。それでは進歩はない」
草太「じゃあ、念のためシミュレーションで確認してみようよ」
直線スロープ1の始点Bからボールを落下させたとき、速度0のときと速度837mm/sのときのシミュレーション軌跡を図4.1に示します。
草太「思ったほど差がないね。直線スロープ1の終端から20mm下の位置で、水平方向に約5mmしか軌跡に差がないね。この差を吸収できるようにロック機構を設計すればいいんだ」
銀二「思ったより差が出なかったな。837mm/sで落下させたときの軌跡はゲートと衝突した後上に跳ね上がっているな。これはボールの回転の影響だな」
草太「速度が速いということは同時に回転も速いからゲートに衝突したときに回転方向に跳ね返ろうとしているんだ。ビリーヤードで回転を掛けたときの球と一緒の動きだね」
銀二「じゃあ、設計したロック機構を作……」
草太「叔父さん。この前出した僕のメールでも『ロック機構と台車は先に作っとくよ』って書いたじゃない。もう作っちゃったんだよね」
草太「これ(写真4.1)がロック機構で、これが台車(写真4.2)。そして直線スロープ2の傾斜角度は10度。直線スロープ1の傾斜が5度だったからその2倍としてみたんだ」
草太「台車の中に入れるボールは、曲線スロープで使ったスーパーボールと一緒に買った中で一番重いボールを使おうと思っているんだ。それから、図1.1では、スロープからのボールが当たってロックが外れ、その後のボールの行方は知らん、というイメージだったけど、僕は網で受ける構造にしたよ。その方が、バトンリレーみたいでいいでしょー」
銀二「仕事をしてくれたボールを放っておくんじゃなくて、『ねぎらいと感謝の意味を込めて、網で受け取る』、そんな感じかな。それが草太の設計センスなんだね。じゃあ、草太の設計を評価してみようか」
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