Pro/Eでモデリングしながら、人体モデル検証もPTCの新製品「Pro/ENGINEER Manikin」とは

» 2008年11月27日 00時00分 公開
[小林 由美,@IT MONOist]

 PTCジャパンは2008年11月27日、「Pro/ENGINEER Manikin」の製品説明会を行った。同製品は米国で2008年11月12日に発表済みだが、日本では始めての説明会だ。2008年12月中旬より、「Pro/ENGINEER Wildfire」のバージョン4.0 M060以降のモジュールとしてダウンロード可能となる。

 Pro/ENGINEER Manikinは、マネキンと呼ぶ人体を模した3次元モデルを用いて、人体と製品の相互作用を検証するツールだ。「Manikin Extension」とその上位バージョンの「Manikin Analysis Extension」の2種類がある。

 「他社ベンダが提供する同様の製品では、工場のデジタルマニュファクチュアリングの用途がメイン。でもPro/ENGINEER Manikinは、設計検証で積極的に使ってもらえるように考慮している」とPTCジャパン 営業技術部 プリンシパル アプリケーション スペシャリスト 芸林 盾氏は話した。ヒューマンファクタの専門家でなくとも、直感的で簡単に検証できるように工夫されているという。

PTCジャパン 営業技術部 プリンシパル アプリケーション スペシャリスト 芸林 盾氏

 Pro/ENGINEER Manikinのマネキンは、Pro/ENGINEERの空間内に、3次元モデル同様に置かれる。マネキンは点(座位・立位)と面(平面や3次元モデルのサーフェス)を基に配置する。マネキンを置いた状態で、3次元モデルの形状や寸法の修正も行える。マネキンのデータフォーマットは「asm」でアセンブリ扱いだが、通常のモデルのようには修正できない。

 マネキンの形状(体格)はあらかじめ決められており、間接を自由に動かせるようになっている。マネキンに設定された点や軸をドラッグすることにより動かせる。間接の動作は実際の人体の限界を忠実に再現している。妖怪のように首が180度回ってしまったりはしない。

 マネキンの体格は全部で32種類ある。アジア、欧州、米国などで、それそれ平均の体格のデータを登録している。そこからさらに、男女、パーセンタイル3パターンに分かれている。男女の区別はないが、子供の平均体格も5歳と10歳の2種類が登録されている。現状のバージョンでは、腹が出たメタボ体型など、体格の個人差に関しては未対応だが、将来的には登場の可能性があるという。

ポーズライブラリ(マクロ)

 マネキンの取るポーズのバリエーションもライブラリ化されている。体全体が対象の「マクロ」と、手足など局所が対象の「ミクロ」の2種類のライブラリがある。ユーザーが作成したポーズを登録することも可能だ。ライブラリから引き出したポーズを基にして、間接を動かして微調整する。マネキンの動きの管理に関しては、フィーチャーツリーとは別のツリーが存在する(マネキンのモデルそのものは、フィーチャーツリー内にも存在する)。マネキン用のツリー上で、固定や解除を選択することができる。上半身のみ固定、腕だけを解除するなど、固定や解除のパターンを必要に応じて選択することができる。

Manikin Extensionによるリーチ検証 写真のマネキンはタイ人女性がモデルだそう

 Manikin Extensionでは、例えば車のシート回りのアセンブリの中にマネキンを配置し、ペダルやハンドルの位置が適切かどうかの検証ができる。シートにマネキンを置いてリーチを調整する。「腕を目いっぱい伸ばしても、ハンドルをしっかり握れない」というようなときにはアラートも出してくれる。

リーチエンベロープ

 「リーチエンベロープ」は、マネキンの胴体や手が届く範囲などを可視化する機能だ。透過表示の風船状のジオメトリで表現する。左と右、2つのエリアを表示する。間接の限界も考慮されている。

 またユーザーの視野を検証することが可能だ。マネキンを第三者が見ている状態と、マネキン自身の視野の状態の2種類のビューがある。第三者視点のビューでは、かろうじて見える範囲、両目で見える範囲、字が読める範囲など視野のレベルに分けて色分けしたエリアが表示される。

 以下の写真では、左に立っているマネキンの顔が右上のミラーの中に映っている。

ミラーの映り込みを再現

 通常のモードではこのようにはならないが、鏡の表面にレンダリングを掛けることで周囲のマネキンや物体の映りこみを再現することが可能だ。

 ほかには重心検討、マネキンの体格差による影響の検証なども行える。

 Manikin Analysis Extensionは、工場内の作業者の身体の作業負荷を解析することが可能だ。作業者がとある重さの荷物を持ち上げたときのRULA(Rapid Upper Limb Assessment)方程式ベースの指標を算定するようになっている。またSNOOKテーブルに基づいた、作業者の酸素消費量、心拍数を予測する機能もある。この解析結果は、製品や部品の設計目標や重量制限を判断する材料となる。この解析では、マネキンを含む3次元モデルは剛体として認識されないため、CAEの応力解析などとの連動には未対応とのことだ。

 Manikin Extensionのライセンス定価は62万9000円(税別)。Manikin Analysis Extensionを付ける場合はこの価格に上乗せとなる。「解析を専門としない設計者なら、基本的にManikin Extensionだけで必要な検証はできるはず」と芸林氏は話した。同製品の試用版(無料)である「Pro/ENGINEER Manikin Lite」も製品版と合わせて2008年12月中旬よりダウンロード可能となる。試用版であるLiteシリーズについては、ほかにCAE版とCAM版も2009年2月中旬に登場する予定だ。

Web発表会

 記者発表会の後で、「Microsoft Office Live Meeting」を利用した一般向けのWeb上の発表会も行った。こちらはWeb上で事前登録しておけば、Pro/Eユーザーでなくとも参加可能だ。ここではPro/ENGINEER Manikinと合わせて、Pro/ENGINEER Wildfireのバージョン5.0と6.0のリリース計画も発表した。5.0はすでに試用版がダウンロードできるようになっているが、製品版は2009年5月に販売開始予定とのことだ。6.0は、2010年後半に販売予定。最後には、参加者からの質疑応答も受け付けた。

参加者が覗く画面:中央にプレゼンテーションやデモが表示される

現場の様子はこんな感じ

 発表会が終わると早速、参加者のアンケートが芸林氏のマシンへ次々と飛び込んできた。

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